19話 メイドさんとお嬢様とアカデミー

「「「それでは行ってきます。」」」


ゼノさんとマーサさんに挨拶をして私・お嬢様・カーラの三人は馬車に乗り込みマックスは御者。馬車を使うほどの距離ではないのですが立場と防犯上の都合で馬車移動となります。


「紅竜姫のケイさんだっけ?のアイディアだけどアタッチメント式にして脱着できるようなの考えてみたよ。銃剣バヨネットにしておけば刀身の長さも好みで変えれるしウィンチェスターなら片手で振り回すのには苦はなさそうだしね。」


一晩で思いつくという事は前世でそういった装備があったのでしょうか…。あとでお嬢様に聞いてみたところ


「すっかり忘れてたけど先込め式マスケットの時代から現代まで存在してる割と長い歴史の装備だね。ティアの好きな吸血鬼漫画のライバルはそれだけを主装備にしてたし軍隊とかだと銃剣道って武道として確立されてるよ~。」


との事でした。王都に到着して一週間、試験まであと一週間というところで二人に試験対策の出来を確認してみると二人ともまぁ落ちることはないであろう程度には仕上がっているようなので一安心です。お嬢様に至ってはおそらく主席も狙えるレベルでカーラもそこまではいかないまでもだいぶ上位には食い込めそうですね。


「王都邸に到着してからあの建物がアカデミーなんですよね?確かに歩いて行ける距離とはいえだいぶ大きいですよねぇ…。」


城壁に寄り添うように立っているアカデミーは私達が居を構える東地区は勿論貴族街のある西地区からも見えるくらい大きな建物であれより大きいのは王城くらいです。大きいのは高さだけではなく広さも東地区の二割近くを占めるほど広大で城壁の中だというのに訓練用の森もあるくらいです。

正確には敷地内というより敷地の一部が城壁外の森に食い込んでいるといった方が正解でしょうか。ぱっと見はここだけ城壁が途切れているように見えますがそこは魔導具候のお膝元、魔導具による障壁が常時展開されているので魔物や密入国者は入ってこれません。仮に入ってこれたとしてもアカデミー敷地が城壁の役割をしているためそれ以上国内には入ってこれないという仕組みです。


「学生は範囲が決まっていますが森への立ち入りが出来たおかげで食材や建材の調達には事欠きませんでしたね。」


「食材と建材…?」


まぁそのあたりはおいおいお話しするとしてそろそろ門が見えてきました。門番さんに身分証を提示して要件を伝えます。


「マリン=バルドフェルト嬢とカーラ嬢の受験前の下見ですね。予約は承っていますのでそのままどうz…って嬢ちゃんと御者の兄ちゃんはもしかしてここの卒業生じゃないかい?」


「ご無沙汰しています、その節はお世話になりました。」


「やっぱりそうか、そういやあの年から始まったコースだからどこかの家の侍従として来る事もあるかぁ。なら受付の場所は大丈夫だね?」


「はい、勝手知ったる母校ですからね。馬車はいつものところでいいですか?」


「そうだね、特に今は他に来ている人もいないからすんなり停めれるはずだよ。」


門番さんと二言三言交わして車寄せへ。私達が降りてからマックスは馬車置き場へ。


「ふわぁ…遠くから見ても大きかったけど目の前まで来ると圧巻だねぇ!」


お嬢様とカーラがひっくり返りそうなくらいに見上げています。


「まぁ一ヶ月も生活していれば見慣れますが最初は私も驚きましたね。マックスなんてこんな大きい建物を見たことが無かったので大はしゃぎでした。」


「ふふっ、マックスらしいね。」


さて、いつまでも入口にいてもしょうがないので受付に向かいます。





「あら、ティアじゃない。そっか、ティアはバルドフェルト家の侍従だったわね。」




受付から聞き覚えのある声がすると思ったら…


「あらルーティじゃない…こほん、ルーティ=エインフェリア様、ご無沙汰しております。」


「いいのよ、ここじゃ身分は関係ないし同窓生なんだから。」


「ティアの知り合い?」


「はい、こちらはエインフェリア伯爵家の令嬢で私の同窓生でもあるルーティです。コースは官僚コースでしたが魔導士としても優秀ですよ。」


「はじめまして、マリン=バルドフェルト様とカーラ様ですね。ティアからのご紹介の通りルーティ=エインフェリアと申します。今の時期は貴族の来館が多いので臨時で私も受付に着いておりますが本職は当校の魔導士コースの講師をしております。選択授業でも顔を合わせる機会があると思いますのでお見知りおきを。」


「「よろしくお願いします!」」


「元気があっていいですね。私達もこんな頃があったのかしら…。ねぇティア?」


私に振らないでください…。というか私はこの二人ほどかわいげがある新入生じゃありませんでしたからね…。


「ふふっ、そうね。今日はマックスは来てないの?」


「馬車を置きに行ってるわ。まだマックスの事諦めてないの?」


私はニヤニヤしながら尋ねます。これを外でやったら不敬罪で打ち首モノですね。


「だってぇ…。平みn…一般枠で入学したにも関わらず騎士コースを主席卒業、その特典で王立騎士団入団と一代だけど爵位まで与えられるってのにバルドフェルト家に仕えるって言って蹴っちゃったんだもの…。マックスの実力なら男爵…いや子爵くらいまでは固いし私三女だから嫁ぎ先としては申し分ないのよ?」


「マックスって主席卒業なんですか!?」


「あれ?彼その話してないんですか?まぁマックスらしいと言えばらしいわねぇ…。ちなみにティアも侍従コースの主席で総合だと次席ですよ?」


お嬢様とカーラがすごい目で見てきます。自慢するほどの事ではないのでこの話はしてなかったのです。


「ティアもマックスも在学中の話は全然してくれなくて…。もし入学出来たら色々教えてくださいね!」


「いいけど大丈夫かしらねぇ…。ティアもマックスもお二人がとしてここにいるから…」


あー…言っちゃった…もう少し黙っているつもりだったんですが…








「「えー!?」」










二人の声がエントランスにこだまします。

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