18話 メイドさんと女性冒険者さん

「「「ほんっとアンタ達は相変わらずよねぇ」」」


マックスを待っている間に顔見知りの女性冒険者パーティー【紅竜姫こうりゅうき】のみなさんとお茶をしようと席に着いて第一声がそれです。ちなみに王都に着いた時の道すがら声をかけてきたのも彼女達です。


「パッと見そうでもないのに制圧力おかしいし普段は温厚なのに煽る時はめっちゃ煽るし。マックスは魔法剣以外割とスタンダードな戦い方するけどあんたなんて銃と体術の混成でしょ?ガンナーで懐に入っても蹴り飛ばされるとか普通ありえないわよ。」


…とリーダーでカーラよりも濃い赤色の長い髪を一つ結びにした切れ長の目がチャームポイントのケイさん、彼女も基本はガンナーなのでよくお話することが多いです。基本は魔導士ですが魔力・魔弾のどちらかが尽きた時はスイッチできるようガンナーというポジションになったそうです。


「てかその義足見たことない型だけど新型?」

長身で細身の剣士のミーアさん。


「私も気になってました!細いし綺麗だし今までにないタイプですよね?」

小柄で眼鏡をかけた魔導士のフィリアさん。


「あたしゃ今の型の方がゴツくて好きだけどそこまで細いと強度はどうなんだい?」

筋肉質で大柄な戦士のキリアさん、なんと武器は巨大な戦斧です。


この四人のパーティが紅竜姫ですが皆さんAランクという女性冒険者の憧れでもあり、一つ特徴があって皆さん魔導義肢を使っているという事です。

そのため私の義足に興味深々なご様子。


「旦那とお嬢様が開発した新型ですよ、私が試作品のモニターという形で使っていますがこれは今後市場投入される予定のタイプです。強度は出せる金額にもよりますがデザインもある程度はオーダーできるようになるので発売された際はいかがですか?」


彼女たちは旦那様のところの義肢の愛用者なので更に宣伝しておきます。


「え!?ホント?今まで特に戦闘用だと体格に合わせるのが精いっぱいだったけどデザインまで出来るようになるのはいいなぁ。」


「見た感じだとミスリルも多く使われてるみたいだし魔力伝導率も良さそう。今もやってるけど義手を触媒に発動させるとロスが少なくていいんですよね。」


「使う金属の比率変えればだいぶ強度も上がりそうだねぇ。もういっそ四人で同じようなデザインでお揃いにしちゃうかい?」


「あー!それいいかも!じゃあ…こんなのはどうかな?」


フィリアさんがサラサラと絵を描いていきます。お嬢様といい思いついてすぐ形にできるのは凄いですね。

描きあがったのはティアラを着けた紅い竜。なるほど、紅竜姫ですか。


「これなら一目でわかるしいいねぇ。でも証明になる。」


「で肝心の値段はどんくらいなの?」


大雑把にですがお値段を伝えると


「やっぱそれくらいしちゃうよねぇ…。とりあえず今のところ払えない額ではないけど素寒貧になっちゃうし、こだわるなら値段も上がるだろうから発売されるまでもうちょっと稼いでおこうか。」


やはりそうなりますよね。しかし私が今着けているのは先行量産型、最初にお嬢様が作ったアレの話をすると


「あっはっはっは!ちょっとした大貴族領の年間予算並の義肢なんて怖くって使えたもんじゃないねぇ!」


わかっていただけたなら幸いです。ついでにちょっとした提案ですが私は日々戦闘しているわけではないので戦闘用義肢のモニターをしてみるのはどうでしょう?

皆さんは高位パーティーですし話題性も申し分なしなわけです。


「それは願ったり叶ったりだけどそんなことできるのかい?」


お嬢様もチェインさんも戦闘用のデータが欲しいと言っていたので実は紅竜姫の皆さんにお願いしてみたらどうだろうともう話はついています。駆け出しのころはかなりお世話になったのでこれで少しは恩返しができるでしょうか?


「さっすがティア!あの時ティアに声かけてほんとよかったわぁ。それともう一つ、魔導銃も新型よね?よかったら見せてもらえないかしら?」


そう来ると思ってました。実は魔導銃のモニターもケイさんにお願いするつもりでウィンチェスターとデリンジャーの二挺を預かってきています。


「なるほどねぇ…ここがこうなって…。弾は今までのと同じでいいのよね?モニターならしばらくは意識して使わなきゃいけないわね…」


「ケイは接近されると思いっきり銃床でぶん殴るからな。ティアを見習ってナイフか体術でも覚えたらどうだ?」


「槍なら使えるんだけどなぁ…。あ!そうだ!これの銃口の下にナイフ括り付ければいいんじゃない?それなら短槍に近いしいけるかも。」


その発想はなかったですね…。そこまで難しい構造ではなさそうなのでお嬢様に相談しておく事と一週間後くらいに工房に顔を出してほしい旨を伝えて解散となったところでいい汗をかいたマックスが戻ってきました。


「まったく…アイツらときたら手加減なしかよ。おかげでもう一回ガルストさんの店に行く羽目になっちまいそうだ…」


その割には随分と楽しそうですね。


「まぁな。普段は魔物とか見知った連中しか相手にしてないし冒険者なら色んな戦闘スタイルしてるからいい勉強になる。さて、お前さんの用も済んだならそろそろ帰るか?明日はお嬢様たちとアカデミーの見学だろ?」


マックスのいう通り明日は二人の試験受付と会場の下見がてらアカデミーに行くことになっているのでそろそろ帰りましょうか。その前にガルストさんにマックスの剣を預けて工房で今日の話を伝えておかなければいけませんね。

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