16話 メイドさんと騎士さんと冒険者ギルド②

「ニーナさん、こちらの方は…?」


「Cランクのバッカスさんとそのパーティ【黒獅子】の皆さんです。元々北方帝国で活動していたようですが御覧の通りでして…Bランクに推薦してもらえずここ一年くらい前からこちらに移動してきたようです。どこに行っても推薦条件は変わらないのに…。」


なら私達が知らないのも納得ですね。っていうか黒獅子って…見た目からしてどちらかというとバッカスさんオークみたいな体型してますし。


「うるせぇ!実力はあるのに毎回毎回推薦落としやがって!そんなに俺たちが上がるのが怖ぇのか!なんでも数年前に最年少Bランクとかってのも出たらしいが本当かどうか怪しいもんだな!」


知らないって素晴らしいですね…まさか本人たちが目の前にいるとも知らずに…。ニーナさんがちらりと横目で見てきましたが言わなくていいと目配せしておきます。


「姉ちゃんも冒険者なのか?こんな優男とじゃなく俺たちのパーティに入らねぇか?させてやるぜぇ?」


後ろにいる狐目で痩せぎすの男の視線が舐めつけるようで気持ち悪いですね…装備を見るからに斥候役でしょうか。ぱっと見でパーティーは4人、斥候1に前衛2、後衛の魔導士1といった感じでしょうかね。バランスは悪くないですがいかんせん頭の中がこれならいつまでたっても推薦はもらえないでしょうね。


「悪ぃなぁ、今は休業中でな。久しぶりにこっちに来たもんだから挨拶に寄っただけなんだわ。こいつ愛剣は念のため護身用に持ち歩いてるだけだしな。それにお前さんらには特に迷惑もなんもかけてねぇと思うんだが?」


あら、マックスにしては大人な対応ですね。昔はこの段階で相手の顔に拳がめり込んでたでしょうねぇ…


「あぁ!?こんな真昼間から女二人とのんきにくっちゃべってるなんざ冒険者の風上にもおけねぇと思ってよ。大方EとかDランクで燻って辞めちまったクチだろうが!」


なんですかその謎理論は…羨ましいんですかね?あまり事を荒立てたくないので誰か助けてくれないかなと周りをチラっと見回してみると皆口元を抑えて笑いをこらえてますね…。中には「やっちまえ♪」と言わんばかりにサムズアップしてる人までいます…。はぁ…。


「あいにく私も休業中ですのであなた方…黒ぶt…黒獅子さんでしたっけ?に入る気は毛頭ありません。それにそのような振舞いだから推薦してもらえないんですよ?Bランクに上がれば王侯貴族からの依頼も来ることもありますし貴方臭いますよ?身だしなみも整えず尚且つそんな態度だと命がいくらあっても足りませんよ?」


めんどくさいし少し懲りてもらいますか…というワケでマックスに目配せしつつ今回は私が煽ると流石に堪えきれなくなった数人が吹き出しました。

ご本人は大した煽りでもないのに顔を真っ赤にしちゃってますね…


「うるせぇ!こっちが強けりゃ相手だって震えあがって文句も言えねぇだろ!それに俺はあの【閃斧】とも知り合いなんだ!いいから黙っていう事を聞きやがれ!」


もう完全に三下の発言ですねぇ…てかドイルの事だからどこかの飲み屋で酔っ払って軽く話したとかそんな程度でしょう…。


「しゃあねぇなぁ…流石にここで暴れたらせっかくの食堂が休業する羽目になっちまう。ニーナさん、訓練場借りても良いですかね?」


「はい、


「ありがとうございます。お前らもそれでいいだろ?一応冒険者なら腕で決めようぜ。とやらの実力見せてくれよ?」


「いいだろう、だが4対2、実質4対1だぞ?やる前から勝負は決まったようなもんじゃねぇか、後で吠え面かくなよ?」


あら、私は戦力としてみなされてないようですね…。あぁ…また数人堪えきれずに飲んでたお酒を吹き出しました…この方々芸人の方が才能あるんじゃないですかね…?


そんなわけでつい先日も領都でこんな事あったなーと思いつつ訓練場に向かいます。その後ろからニヤニヤしながら他の冒険者の皆さんが着いてきます…見世物じゃn…ほぼ見世物ですね…


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