15話 メイドさんと騎士さんと冒険者ギルド①

マックスと合流して最後の目的地の冒険者ギルドに向かいます。あそこには食堂もあるのでそこでお昼にしましょうか。


「ちゃんと素材は渡してきた?」


「渡してきたっての。あとはお嬢様のお裾分けで一振り打ってもらえることになった。」


「よかったじゃない。それもだいぶ長く使ってるみたいだし丁度よかったなんじゃない?」


「まぁな。しかもお嬢様の打診で東国で作られてるカタナって剣を打ってもらえるみたいで片刃で押し付けて切るってより引いて切る俺の癖との相性が良さそうだから今から楽しみだ。」


とお互いのあったことを話しつつ冒険者ギルドに到着しました。ここは各国の支部をまとめる総本部でもあるのでかなり規模も大きく出入りする人の人数も領都のギルドとは比較になりません。

しかし、すべてを相手にしていたら時間も人も足りないので王都周辺の依頼に関しては王都支部があるので私たちはそちら側に行きます。



「「こんにちわー」」


今日はもう三回目ですねコレ…


「あっ!ティアさんにマクスウェルさんじゃないですか!最近王都にいらっしゃったと聞いていつ来てくれるのか待ちわびてましたよ!」


と元気な受付嬢のニーナさん。


「お久しぶりです。今日はお暇をいただけたのでお世話になる場所にあいさつ回りをしていたところです。」


「じゃあ忙しいのかな?これから食堂でお昼食べるから一緒にどうかなと思ったんだけど…」


私達もそのつもりだった事を伝えニーナさんと三人で食堂へ


「ティアにマックスじゃねぇか!依頼受けに来たにしちゃずいぶん軽装だな?」


「ちげーよ、顔出しついでに昼飯食いに来ただけだ。」


と口々に歓迎(?)を受けます。それにしても皆さんマックスの事好きですねぇ…。あいさつの後には必ずと言っていいほどパーティーへの勧誘を受けてます。


「ったく…ここの連中は相変わらずゆっくり飯も食わせてくれねぇのか…。」


「ティアさんもマクスウェルさんも王都支部では有名人ですからねぇ。王都支部が同時に排出した二人のBランク最年少記録、そして大体はAランク以上の人にしか付かない二つ名持ちですからねぇ。しかも同窓生には現役Sランクの【閃斧】ドイルさんもいらっしゃるし他の同窓生の方々も軒並みD~Cランクというある意味異常な世代ですから。」


と名誉なんだか不名誉なんだかわからないコメントをしてくれるニーナさん。


「それ褒めてるんですか?…っとメシが来た~♪やっぱり王都支部の食堂に来たらオークジンジャーは外せないよなぁ~♪」


と雑談もそこそこに御飯が運ばれてきました。私はサンドイッチのセットとスープ、マックスはオークの肉をショウガを効かせた甘辛いソースで炒めたオークジンジャーとアホみたいな量のライス…。騎士は体が資本ですがドイルや旦那様ほど大柄でもないのによく入りますね…。

ちなみにこのオークジンジャーが美味しいとお嬢様にお話ししたところ


「…うん、かなり昔なんだろうけど間違いなく私と同じところから来た人いるねそれ…しかもおそらく時代も近い。ていうか私もそれ食べたい!米と生姜焼きなんて最高すぎる!」


との事でした。建国間もない頃からの名物料理で当時の王宮料理人の方が考案した料理と伝えられていて、その方の考案する料理は今では大衆にも広がっている物も多いです。その方はそういった方向で変革をもたらしてくれたのですね。


「あ~…うめぇ…。領都の食事も悪くないけどやっぱりコレだけはここじゃないとダメだわ…」


「お二人はしばらく滞在されるんですか?」


「はい、マリン様とウチのメイド見習いがアカデミーの入学試験を受けるので受験と結果発表までのあと一ヶ月ほどいる予定です。おそらく落ちることはないと思いますので入学後は私達もこちらに来ることになっています。」


「確かアカデミーは全寮制でしたよね?付き添う必要はないんじゃないですか?」


「平日はちょっと別の仕事を任される事になりまして…。もしかして指名依頼とか持ってこようとしてません?」


ジト目でニーナさんを見ると口笛を吹きながら明後日の方向を向いています。ほんとに持ってくる気だったんですね…そして口笛吹けてませんよ…?


「まったく…一応まだ登録はしてあるとはいえ返却しようとしたら保留されてるなんちゃってBランクなんですよ?」


「いやー、お二人の評判が良くて今でも時々指名がくるんですよ…久々に頼む方もいらっしゃるので毎度毎度説明してお断りするのも忍びなくて…。」


そういう事ですか…。できればあの可愛さの欠片もない二つ名もみんなに忘れてほしいんですけどね…


「そういえばティアさん義足変えたんですね。以前の物より華奢で綺麗だからよくお似合いですよ。」


と義足に気付いたニーナさんにこの義足の経緯を説明したら他の皆さん同様軽く引いていました。


「確かに冒険者にも魔導義足の人も多いですから色んなデザインの物が広まるのはいい事ですね。叩き台が出来てるならそう遠くないうちに量産始まりそうですし今のうちに魔石と希少金属関係の収集依頼出しておこうかしら…。」


とニーナさんがお仕事モードに。あと、ギルドマスターはあいにく出張中らしく収集依頼の予定やご挨拶にお嬢様のところに後日伺うとの事でした。


しばらく談笑していると…


「おうおう、いつからここは喫茶店になったんだ?ろくに装備もしてねぇ一般人が来るところじゃねぇぞぉ?」


と品のよろしくない声が聞こえて今後の展開も容易に想像できてしまうのでため息が出てしまいますね…

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