12話 メイドさんと商会長
「ティアとマックスは王都も久しぶりでしょう?お嬢様とカーラちゃんは私たちが見ているから2人は散策でもしてきなさいな。入学が決まればしばらくこちらにいることになるのだからお世話になりそうな場所にでも顔を出しておいで。」
マーサさんの提案で私とマックスは東地区の今後お世話になりそうな場所に挨拶に行くことになりました。とりあえず冒険者ギルド・各商会・魔導具や義肢装具士のところがメインでしょうか。
「一応帯剣だけして鎧の類は
マックスの服装はシャツとスラックスに愛用の剣を下げたラフなもの。
「私も魔導銃とか弾薬とか基本的なものは入ってるからバッグだけかしらね、最悪義足にナイフ仕込んであるし。」
私もブラウスに歩きやすく膝辺りまでスリットの入ったロングスカートを合わせた一般的な平民スタイルです。お嬢様に同行する時は基本的にはお仕着せですし私服を着るのも久しぶりですね。
ちなみに私はちょっとした倉庫一軒分、マックスはその半分くらい、お嬢様は「あんまり気にしたことないけど多分無制限に近い」との事。
「聞けば聞くほど物騒だよなぁその義足…見た目は美術品並なのに。値段もすごいんだろ?」
「って言ってもこないだの試作品程ではないわよ?アレはさすがに使うのが怖すぎて…。ただこれも一般の魔導義足に比べればかなり高い部類になってるけどね。威力は強度の都合で抑えられたけど相変わらず仕込みの魔導砲も入ってるし…。」
「今更だけど一人でちょっとした魔法師団並の火力あるメイドってなんだよ…。」
そんな事を言いながら私とマックスはお屋敷からバルドフェルト家が運営する魔導具販売と義肢装具研究所を兼ねた商会へ向かいます。
「いらっしゃいませ~!…ってティアさんとマクスウェル君じゃないか、今日はマリンお嬢様は一緒じゃないのかい?」
と声をかけてきたのは商会長のカルロさん。元々はバルドフェルト領の子爵家の3男で商才があったため旦那様が商会を任せるに至ったと聞いています。ちなみにマリンお嬢様の考案した魔導具は最初胡散臭がられたようですがこの方の売り込み方が上手いため着々と王都でも売り上げを伸ばしているようですね。
「「ご無沙汰していますカルロさん。」」
何故かこういう時はマックスと息が合ってしまうんですよね…。
「はっはっはっ、相変わらず息が合ってるねぇ。そういえばお嬢様はアカデミーの入学試験だったね、入学後は二人ともこっちに詰める事になるのかい?」
「はい、在学中は基本的に寮生活になるので毎日のお世話とはいきませんけどね。しかし私とマックスは別件でお嬢様の在学中は確実に王都邸にいますので義足のメンテナンスでお世話になると思いますのでよろしくお願いします。」
「そういう事なら喜んで。…その義足はもしかしてお嬢様が設計したっていうやつかい?なんか素材やら凄い事になったって聞いてるけど…?」
やっぱりその話は聞いてるんですね…。さすがに奥様からお𠮟りを受けて歩く国宝みたいな状態で歩き回るワケにもいかず今着けているのは新しく作り直してもらった廉価版という事をお話ししました。
「ならよかった。流石に私たちも高額なものを扱うけどケタが違いすぎて技師たちもおっかなくて触れないと思ってね。」
デスヨネー。
「そんなわけで今回は顔出しという事でお邪魔させていただきました、受験後には一度領都に戻りますが帰る前にお嬢様もお連れしますね。」
「そうして貰えると嬉しいねぇ。実際開発まで行かなくてもお嬢様の発想には目を見張るものがあるからね、私たちとしてもいい刺激になる。ついでに研究所に寄って義足を見せて行ってくれないかな?一通り見せておけばメンテナンスに必要な素材一式は揃えておくよ。」
「ありがとうございます、今日は彼女はいますか?」
「今日はいるはずだね…まぁ頑張ってくれ…。旦那様・お嬢様以外だと彼女しか君の義足は扱えないし新型とくれば尚更ね。」
「そうですね…しばらく離してもらえないかもしれませんがしょうがないです…。マックスはその間どうする?」
「あー、なら顔だけ出して馴染みの武器屋とか顔出してくるわ。ギルドはお前も行くだろ?昼くらいには研究所に着くように戻ってくるから。」
マックスと今後の打ち合わせをして併設の魔導義肢の研究所へ向かいます。願わくば彼女が出かけていることを祈って…
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