2章 メイドさん王都に行きます

09話 メイドさん王都に行きます

「あー…お尻痛い…これはいずれ馬車の改良もしなきゃだね…。」

「私はだいぶ慣れていますがこれが後3日続くとなると少し気が滅入りますね…。」

「ティアさん…これは慣れるモノなんですか…?」


というワケでお嬢様・私・カーラの三人が口々に文句を言いながら馬車に揺られている理由は私以外の二人のアカデミー入学試験の為に王都に向かっているからです。

領都から王都まで通常で5日、早馬で3日といったところでしょうか。


「そういえば転移魔法もあるんだよね?覚えれば一発で飛べるしこんな苦労しなくて済むんじゃない?」

とお嬢様。


「あるにはありますが魔法陣を使用しての行使になりますし、その陣を敷くためには国の許可が必要になります。主に要人の避難用ですね。」


「どうして国の許可が必要なんですか?みんな使えるようになれば便利ですよね?」

と不思議そうなカーラ。


「まず魔法陣の起動の為に莫大な魔力を消費します。5~6人を同時に転移させると国家魔導士級の人間の魔力がすっからかんになるそうです。もうひとつは誰でも使えるようになると今度は要人の暗殺が簡単にできてしまう為ですね。王城のどこかに王族の避難用の転移陣があるそうです。どこに飛ぶかはごく限られた関係者しか知らないそうですよ。」


「へー。ティア詳しいね、それもアカデミーで教えてくれるの?」


「その理論を確立させて実用までこぎつけたのが父ですので。もちろんそれをまとめたものは国庫に保管されています。まぁまだ新しい部類に入る技術なのでいずれは魔力消費を抑えて誰でも使える時代が来るかもしれませんね。」


「それなら大量かつ安全に人とか荷物を運べる乗り物を考えた方が早いかもね。」


後で教えていただいたのですがお嬢様の世界には一度に1000人以上の人をとんでもない速度で運んだり空を飛ぶ乗り物があるそうです。魔法も無い世界でどうやって空を飛ぶのでしょう…。


道中そんな他愛も無い話をしたりお嬢様の乗り物の構想を私とカーラが聞いたりして過ごしようやっと王都が見えてきました。


王都は四方を城壁に囲まれ北側から東側にかけて北部領とを隔てる大きな森林があり、東西南北それぞれに大きな門を構え中に入ると大通りがあり外周側から平民街・貴族街・王城の順に層になっています。正円というワケではなく森のある北から東にかけては貴族街がなく商会・市場・冒険者ギルドのある区画となっているのはやはり森の魔物から取れる素材などを扱うためなんだとか。ちなみにアカデミーは東側の城壁を背にするように建っていてこれは騎士コースの実地訓練に行きやすくするためだそうです。


そんなわけで王都への門が近づき


「うわぁ…こんなに並んでたんじゃ王都に入るまでに日が暮れちゃうんじゃない?」


「私たちは貴族用の小門がありますのでそちらから入る事になりますので割と早く入れますよ。アカデミーの生徒も在学中はこちらの門の使用が認められるのでカーラも一人で王都の出入りが出来ます。」


「一人で王都の出入りする事ってあるんですか?」


「そこはね。状況によっては一人は無いかもしれないけど数人で結構頻繁に出入りする事になるわ。」


「今後の選択って…どういう選択をすればそうなるんですか?」


少し怯え始めるカーラ。まぁそれは今後のお楽しみですね…できればそっちの選択はして欲しくないけれど…。


「カーラちゃん、怯えなくてもいいぜ。そっちを選択したとしても俺らの時よりは酷くないはずだからな!」


と窓を開けていたため随伴していたマックスのフォローにもなっていない発言。確かに私たちの時よりは大分マシでしょうけどその言い方はどうなんでしょう?


「マクスウェルさんの時代って事はティアさんも一緒ですよね?一体お二人は何をしでかしたんですか!?」


失礼な。何もしでかしてませんよ?


「マックス…それじゃ私たちが色々やらかしてるみたいじゃないの」


「まぁ当たらずとも遠からずってとこだろ?その辺はティアの言う通り選んでみてからのお楽しみだなぁ。どうせ騎士団長辺りからは探ってきてこっそり教えてくれとか言われてんだろ?」


「あぁ!寮の事ですか!…あ…すいません…騎士団長には内密に…。」


「やっぱりな…。まぁどっちを選ぶかはカーラちゃん次第だからよく悩みな~。」


騎士団長…そんなに気になるんですか…。


「私は選べないの?」

と少し蚊帳の外になっていじけ気味なお嬢様。あぁ…膨れたお顔も愛らしい…


「その辺りは受付の時にでも話が聞けると思いますのでその時にでも。さて、私たちの番が来ましたよ。」


マックスが門兵に貴族家の証明を見せていると…


「おぉ!久しぶりだな!覚えてるか?お前らがいたころ東門の門番やってたんだよ!」


あ…このパターンは想定していませんでした…私たちを覚えているのはアカデミー関係者と冒険者ギルドの人くらいだと思っていたのに…




「ティアたちほんとになにやったの…?」






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