08話 メイドさん模擬戦をします
というわけで訓練場に移動します。カーラをはじめ誰も心配していませんね…。だれか一人くらいは心配してくれないんでしょうか…。
そういえばお嬢様から聞いた向こうの世界のお話の中にもこんなパターンがお決まりのようにあるようでご本人がいらっしゃったら
「テンプレだー!」
と喜んだかもしれませんね。
というわけで準備を始めます。模擬刀ですがゴーなんとかさんの獲物は大剣、腕力には自信があるようです。
「まさかお嬢ちゃん素手かい?それを言い訳にされても困るぜぇ?」
「言い訳にするつもりはございませんよ?先ほども申し上げた通りたかだかDランクには素手で十分ですので。強いて言えば私の義足は固いので痛いと思いますよ?」
「後で後悔すんなよ?審判さん、本人も良いっつってるから始めてくれや」
あ、Sランクには一応さん付けするんですね。
「まったく…それじゃ文句なしの一本勝負、戦闘不能になった方の負けだ。いいな?間違っても殺すんじゃないぞ?」
「おう。」
「はい。」
「それでは…始め!」
「ぬぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
と開幕ダッシュしてくるゴーなんとかさん。
木剣とはいえ大剣を扱って振り回すのはまぁ一応はDランクといったところでしょうか。しかしこの位では当たりませんよ?足捌きだけでも躱せますね。
ラッシュも一段落したようなのでバックステップで少しだけ距離を置きます。だって臭いんですもの…。
「どうかされましたか?まだ一当てもされておりませんが?」
「ぜぇ…はぁ…ちょこまか動き回りやがって…そっちこそ防戦一方じゃねぇか…逃げ回ってるだけじゃ俺には勝てねぇぜ?」
息上がってるのによくもまぁ…
「それでは私も暇というわけではありませんので終わらせましょうか。」
身体強化は要りませんね、一息に懐まで飛び込み左膝で蹴り上げて…
「ガッ!?なっ…?」
そのままの勢いで右足で後ろ回し蹴り。これもお嬢様から聞いた事で一度試してみたかったんですよねぇ
「がぁぁぁぁぁぁっ!!!???」
10メルテほど吹っ飛んでいってゴなんとかさんはそのまま気絶したようです。まぁこの義足に蹴られりゃ痛いでしょうね…。
「勝者、ティア嬢!そこの伸びてるアホは水ぶっかけて叩き起こしとけ!」
「ティアちゃーん!かっこいいー!」
「つーか何だよ今の、浮かして蹴り飛ばすとかボールじゃねぇんだからwww」
野太い声援を中心にこの一件はきっと皆さまの今夜の酒の肴になるんでしょうね…。
「ティアさんお疲れさまでした。ゴードンさんの件はギルマスにも一応報告して後で説教してもらっておきます。ドイルさんもご協力いただきありがとうございました。多くはないですが後でお礼をさせていただきます。」
「冒険者の指標たる者として当然の事をしたまでよ。あのアホはしばらくまともな依頼受けさせてもらえねぇだろうからいい薬だろ。それにしても今蹴り飛ばし方は面白かったなぁ。流石『黒脚』の二つ名は伊達じゃねぇな、Bランクのティアさんよ」
あぁ…当時義足の色が黒くて重さと魔力付与に任せて蹴り飛ばしてたせいで付いた恥ずかしい二つ名を暴露しないで…
「ちょっとやめてよドイル!それにBランクって言っても返上しようとしたら止められて保留にされてるなんちゃってBランクなんだから!そしてその二つ名恥ずかしいから言わないで!」
「え?ティアさんとドイルさんお知り合いなんですか!?」
「えぇ、私と彼とマックスはアカデミーの同級生です。」
「ま、俺は訳ありで中退しちまったがな。あそこの教育のおかげでこうして
Sランクにも上がれたわけだ。」
Bランク以上は資質も求められますからアカデミーで騎士教育受けてるならまぁ無理な話でもありませんね。
「さすがティアちゃん…Sランクと知り合いなんて…」
「それ以上にBランクとか…」
「王都のギルド行った時その二つ名聞いたことあるわ…」
「顔赤くして焦ってるティアちゃん珍しい…かわいい…」
もうほんと恥ずかしい…
「ところでドイルは何しに来たの?」
「たまたまこの街に立ち寄っただけだな。ま、運がよければかつての同級生に会えるかもとは思ってたがまさか着いてすぐに会うとは思わなかったぜ。銀月亭って宿に一ヶ月ばかり滞在するつもりだからマックスに予定が合いそうなら飲みに行こうやって伝えといてくれよ。」
「わかった、多分マックスも喜んで出てくるわ。それじゃ思わぬところで時間もかけちゃったしカーラ、帰りましょうか。」
「そうですね。それとさっきの蹴り技私にも後で教えてください!」
この子の将来が心配です…あ、私の可愛さのかけらもない二つ名については口止めしておかなければなりませんね…。
思わぬ茶番と再会を果たしてどうやって口止めしようか悩みながらお屋敷に帰ります…なんかどっと疲れた…。
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