06話 メイドさんお嬢様に色々改造されます②

「ティアー!新しい義足よー!」

…と工房にしばらく通われていたお嬢様が大きな布包みを抱えて来ました。開けてみると白の中にうっすら銀が混じりお嬢様の好きなサクラの透かし彫りが施された美しい義足が…いや、コレほんとに王城の宝物庫にある祭事用の武具並なんですが…。

かかったお値段を想像し意識が飛びそうになりましたが何とか持ちこたえ震える手で交換します。


「フィッティングは問題なさそうね、試運転しに試験場に行こう!ついでに新しい魔導銃の試験もお願いね!」


工房に併設してあるちょっとした運動場くらいある試験場に移動します。


「じゃあまず魔導銃からお願いね。」


今までの先込め式マスケットをベースにした魔導銃とは違い銃口のある筒の下に口の無い筒、持ち手とストック以外は金属製で引き金のある部分にはレイピアのハンドガードのような物が付いています。


「この横の穴から弾丸を入れると下の筒の中に納まるの。多分15発くらい入るかな?」

ふむふむ。


「撃つときはこのハンドガードの部分を前に押し出すと弾が上に移動して発射準備完了、撃ったらもう一度レバーを動かすと薬莢が排出されつつ次弾が装填されるって構造。実弾でも魔弾でもどっちでもいけるよ!威力的には魔弾の方が強いから実弾使う事なんてあんまりないと思うけどね。」

ほうほう、これは便利ですね。一発ごとに装填しなくていいのは連射が効きますし、魔弾と魔法の使い分けも出来るのは使い勝手がいいですね。それではさっそく…


カシャッ、ドンッ、カシャッ、ドンッ、カシャッ、ドンッ


実弾と魔弾両方で試してみましたがこれはいいですね…。魔弾だと飛距離も威力も伸びますが魔力が少ない人でも20メルテくらいであれば実弾でも対処できるでしょう。


「さすがティア。慣れてきたところでちょっとお願いがあるんだけど…。リロードの時にこう片手でくるっと回して…」


こうでしょうか…?レバー部分に指をかけてくるっと…

カシャン、ドンッ

うむぅ…狙いが難しいですね…至近距離で両手が使えない場面なら有効そうなのでちょくちょく練習してみましょう。


「かっこいいー!!!シュワちゃん張りのスピンコックだー!マッチョがやっても画になるけどかわいいメイドさんがやるとまた違った良さがある!!!」


なんでも向こうの世界の役者さんで世界一この撃ち方が似合う人なのだとか。


「じゃあ次はコレ。どちらかというとご婦人の護身用。」

手のひらサイズの可愛い銃が出てきました。


「装弾数は2発、小さいから狙撃には向かないけど護身用としちゃ十分でしょ。実弾・空砲・魔弾全部いけるけど暴漢を無力化できればいいし実弾だとご婦人の細腕で反動に耐えれるかわからないから雷属性付与した魔弾あたりが無難かなぁ。」


ふむふむ。


「男性は袖の中、女性はガーターベルトに仕込むのがロマンだよ!」

何でしょうかそれは…。


さて、魔導銃のテストも上々だったので次は私の義足でしょうか。ちょうど旦那様と奥様もいらっしゃいました。


「ティアは体術も得意だよね?魔力の伝達率も上がってるから試してみて。」


お相手の案山子が用意されたところでまずは身体強化から各属性付与まで試してみましょう。



威力おかしくないですかね…?属性付与どころか威力倍増するように術式が刻んであるようです…。一体目の強化のみで蹴られた案山子は真っ二つにへし折れ火属性付与でケシ炭になり氷なら一瞬で凍り付き風なら細切れに…。



「スネとカカトに刃も仕込んであって魔力通せば任意で出し入れ可能!」


えっ…


「あとは脹脛の両サイドにオリハルコンのハンドナイフが2本収納!」


ちょっと…


「極めつけは…ちょっと膝立ちになって…そう、ここのロックを解除して…」


うわぁ…


キュィィィィィィィィン…


「撃て!」


ズドォォォォォォン


「やったぁ!仕込み50ミリ魔導砲!任意で収束と拡散使い分けられるから便利だよ!他に不具合も出てないようだし大成功!」

「成功したようだの。何かないかと聞かれて提案してみたら取り入れてもらえた儂とマリンの合作だ!」




「「仕込みはロマン!!!!!!」」



旦那様とお嬢様はハイタッチで喜び他の研究者は苦笑い…あ、奥様顔が笑ってるけど目が笑ってない…これは旦那様はあとでお説教…あ、耳を掴まれて連行されて行きました。




かくして私は領内一…いや、下手をすると王国一物騒な右脚を持つメイドになりました。

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