05話 メイドさんお嬢様に色々改造されます①

お嬢様が転生者という事を明かされてから数日、元の世界のお話を色々聞かせていただくのが中々面白いです。時折少し寂しそうな表情をされることもありますが基本的に割り切ってしまっているようなのでそのあたりはご本人におまかせしております。なんせ10年間も心の内にしまっていたのですからそりゃあ吐き出したくもなりますよね。


なんでもあちらの世界では魔法の類が一切なくその代わりに科学…錬金術のようなものが発達していてお嬢様の国は「いかに快適に過ごすか」「毒抜きをすればおいしい物は意地でも毒抜きする方法を確立する」とかその世界でも割と尖った国で生活なされていたようで特に物語を生み出す能力に長けた方々多く他の国々からも一目置かれていたようです。


その物語の中に私のように戦うメイドや執事の登場する作品もあったりして「まさか本当に存在すると思わなかった。」と目を輝かせていました。内容は…とてもお上品とは言えないモノでしたが何度も読み返していたようで内容を語っていただいているうちに恥ずかしながら熱くなってしまった物もあります。その感想を述べると


「ティアは見かけによらず漢の教科書が好きなんだねぇ…」


と苦笑いしておられました。長い年月をかけて最強と言われるまでに改造された吸血鬼のお話は主を持つ身としては見習うべきところも多かったですね…。あとは私のような義足をもった錬金術師のお話も胸を熱くしてくれました。

お嬢様…こちらの世界に置き換えて物語として発表すればかなり売れるのではないでしょうか…?


「うーん…あれは漫画…絵物語って言ったらいいのかな?文章だけじゃなく基本は絵だけで構成してる話だから私には難しいね…それぞれの画風があってこそだし。確かに識字率を考えればいい勉強になるかもしれないけど印刷技術だったり製紙技術だったりまだまだ届かないかな?」


残念です…。そして午前中の家庭教師の授業も終わり午後は自由になり…


「ティアの義足をもう少しいじりたい、こないだのはまだ試作品だからまだまだ改善の余地があるよ!」

との事で旦那様もいらっしゃる屋敷併設の工房に向かいました。


旦那様はご子息のラウール様に執務のほとんどを任せており特別な事がない限りはこの工房で魔導具の開発に勤しんでおられます。


旦那様のところに向かう道すがら工房の研究者たちからは

「お嬢様!こないだの冷蔵庫とやらが形になってきましたよ!どうにか今月中には試作品が仕上がりそうです!」とか「ティアちゃんに作った義足のデザイン案を他の領の連中に見せたら目を丸くして悔しがってたから特許申請しときました!」といったように研究者からも大人気です。



「お爺様ー!ティアの義足の相談に来ました!」

「おぉよく来たな、ティアの義足のデザインは他の魔導義足開発者が度肝を抜かれておったぞ。」

「さっき研究所の方から聞きました。特許申請も通ったとかでこれでまだまだ開発費も確保できますね。」

「そうだな。マリンのおかげで魔導具侯の面目もしばらくは安泰じゃわい。」

とお二人とも本当に魔導具がお好きなんですねぇ…


「それで、ティアの義足に…して…をしようと思っているんですがどうでしょう?」

「うむぅ…そうすると強度が落ちるのではないか?今のデザインでも従来品より強度が下がっているであろう?」

「民間向けのは今ティアが着けている程度でもいいと思うのですがティアが使うとなるとやはり強度に不安が出ますよね…。いっそミスリルとかアダマンタイトを多めに使った合金で作りましょうか!そうすれば魔力の伝達効率も上がります!」


なんかお値段がとんでもない事になりそうな話をしてらっしゃるのですが…


「それだと材料費だけでちょっとした屋敷が建つぞ…?」

「いいんです!私が今のところ保有してる特許の使用料だけでも作れますし量産せずにティアだけのワンオフ品にしますので!」

「それなら何とかなるか…なら比率はこんな感じでどうだ?そうすれば儂の従来品より強度は上がるぞ。」

「それでいきましょう!早速鍛冶工房の方に依頼出してきますね!」


と駆け出して行きました…一人前のレディにはまだまだ遠そうですね…。いい時間ですしすぐ戻ってくるでしょうからお茶の準備でもしてきましょうか。


「本当にマリンはお前によく懐いているな…。アカデミー入学後は一緒に王都の別邸に連れていく気も満々なようだしあれでは嫁に行く時も連れていくと言い出しかねんな。」

「お許しがいただけるならどこまでもお供させていただく所存でございます。」

「ハッハッハ、それは有り難いがお前もいい相手が見つかればその者と一緒になっても良いのだぞ?お前自身も幸せになってもらわねばに怒られてしまう。」

「いえ、もありますし貰い手などいないでしょう…何よりお嬢様に仕える事が私の幸せですので。」

「そうか…。気が変わったのなら言ってくれ、マリンも反対はせんだろうし儂も全力で応援しよう。」

「お心遣い感謝いたします。」


まぁそんな日は来ないと思いますけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る