第14話

 魔界に入りこんだ七人の勇者達。彼らの魔王宮殿への道のりは険しかった。


 バイパーの記憶だけを頼りに、最短かつ戦闘を極力回避したルートを進む。


 そして、人類の最高戦力である勇者たちは遂に魔王宮殿にたどり着いた。


 しかし、勇者達が魔王宮殿に入ることはなかった。魔王宮殿の門から現れた魔族を見てかつてない戦慄を感じたからだ。



「よくぞ、ここまでこれたものだな勇者達よ。見事といっておこうか」


「「「「「「「っっ!!??」」」」」」」



 その魔族は褐色の肌、血のように赤い髪、金色の瞳、頭から生えた禍々しい2本の黒い角、誰もが振り向くほどの美形、首から下までの肌を隠す紫を基調とした服装、金色のネックレスを身につけていた。その特徴的な姿は人類連合軍が一度だけ確認した魔王と思われる魔族の姿と一致していた。



「バイパーさん、もしかしてあいつが!」



 セイブンが震えながらバイパーを振り返ると、バイパーはこの場で誰よりも震えていた。



「ま、間違いない! 魔王宮殿を遠目で見た時に確認した魔王と思われる存在! あのドラクン・エモンに頭を下げさせていた姿から、魔王かその縁者かと思われていたこともあったが……このオーラの圧力!」


「おや? 貴様、数十年くらい前に魔界に来た人間の生き残りであったか。妾の姿を確認していたとは少し驚いたぞ。この魔王の姿を人間が見れたのであるからな」



 バイパー、そして他の勇者たちも確信した。今魔の前にいる魔族の女こそが人類の宿敵である魔王尾なのだと。



「お前が、魔王………!」


「いかにも。我が名は『ターレナ・コロク』。妾こそ魔王だ!」


「「「「「「「っ!!」」」」」」



 我こそが魔王と宣言したターレナ・コロク。その直後、彼女から膨大な魔力が発生した。これまで戦った来た魔族たちの誰よりも強大な魔力の圧力が勇者たちを襲う。しかし、それで怖気づく勇者たちは一人もいなかった。



「く、なんて魔力量だ!」


「あの五人の大元帥の主なのだから当然よね……!」


「皆、怯むなよ! ここでまでくればもう逃げ場もないんだからな!」


「無論、戦うでござる!」


「僕たちの背中に人類の未来がかかっている! 負けるわけにはいかない!」


「俺たちで魔王を倒す! それだけだ!」


「当然だね!」



 勇者達の誰一人が己の魔力の圧力に屈しないさまを見て、ターレナ・コロクは笑った。



「ほほう、嬉しいぞ。そう来なくてはな、ではこれはどうかな? 『爆獣破(ばくじゅうは)』!!」



 ターレナ・コロクは漆黒の剣を勇者たちに向けると、強大な魔力を纏わせて振るった。それだけで強力な攻撃が放たれた。まるで魔物の姿をした魔力オーラの嵐が勇者たちに襲い掛かる。



「皆! 防御だ! アンゴール王国を滅ぼした技だ!」


「く! 聖剣結界!」


「ライトウォール!」


「セイントバリアー!」



 魔法を使える勇者のメンバーが魔法で防御する。魔法の三重結界にもなるのだが、魔王の力の前にどれだけしのげるかは分からない。結界の中で勇者達は身構える。



「くっ! なんて強大な力なんだ! これがアンゴール王国を滅ぼした魔王の力……信じられない!」


「おい、エアストがいないぞ!」


「そんな! まさか結界の外に……え?」



 タヒナが最悪の予想をした時だった。突然、魔王の攻撃が止まったのだ。何が起こったのか分からぬ勇者たちが魔王見てみると、攻撃が止まった理由を瞬時に理解した。



「「「「「「エアスト!!」」」」」」



 エアストが魔王の背後から刀で奇襲をかけていたのだ。

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