第13話
「で、でかい……!」
「嘘でしょ! 魔力も跳ね上がってるじゃない!」
「ば、バイパー殿……これが、竜化した……さっきの魔族?」
「そうだ! あの青い竜こそが十年前の俺の仲間や上司を葬ったドラクン・エモンの竜形態だ! 魔王を守る最後の砦みたいな奴だったのに、魔界の入り口に現れていきなりこの姿になるとは!」
青い竜となったドラクン・エモンの姿に恐れたじろぐ七人の勇者達だったが、それでも戦う気でいた。それを感じ取ったドラクン・エモンは、笑っていた。
「くくく、よき闘志だ。そして、見事な戦力だ。これは吾輩も十年前のように圧倒とはいくまい。だが、それでも魔王様のおられる魔王宮殿にたどり着かせるわけにはいかん。覚悟するがいい!」
青い竜が勇者たちに迫ろうとしたその時だった。突如、空の何もない空間に裂け目ができて、そこから武装した集団が現れたのだ。
「その戦い、ちょっとまったぁ!!」
「「「「「「「ッッ!!??」」」」」」」
「何っ!? あれは空間魔法ではないか!」
ドラクン・エモンの言う通り、空間魔法の類によるものだった。ドラクン・エモン自身も空間魔法に長けているゆえに、この現象についてすぐに理解が追いついたのだ。
「おりゃあ!!」
「どりゅあ!!」
「どっせい!!」
「ぬっ!? 貴様らは!」
三人の壮年の男性がドラクン・エモンに大剣で切りかかってくる。いや、そのうち一人は己の拳で殴りつけていた。格好と戦闘スタイルからして格闘家のようだ。その男性のことをオルカートはよく知っていた。
「あれはウェスト公爵!」
そう。格闘家の男はウィンター帝国の公爵。彼の娘はオルカートの婚約者なのでオルカートは一目で分かったのだ。
更に、多くの剣士や格闘家、戦士や将がドラクン・エモンに切りかかったり、槍で突いたりと攻撃を仕掛ける。そのうちの一人の女性が勇者たちに振り返って叫んだ。
「皆行って! ここは私達が食い止めるから! 魔王のところまで進んで!」
「お、お母さん!」
美しく、豊満で魅力的な肉体を鎧で覆う剣士風の女性はタヒナの母。彼女も帝国の騎士として戦場に立ち、勇者ほどでないにしろ英雄と呼ばれた人であった。
「殿下! どうか進んでください!」
「これでも勇者に次ぐ英雄! 時間稼ぎくらいさせてくだされ!」
ウェスト公爵をはじめとした各国の名の知れた騎士や将たちがドラクン・エモンに向けて戦いを挑む。まるで足止めをしているかのように。
「くっ! おのれぇ! 邪魔をするな!」
いや、実際足止めなのだ。魔界に侵入するにしても魔界へ続く入り口に魔王が強者を門番のように配置するであろうと予想していた人類連合軍。その対策として、勇者達が入り口に到達した直後にウェスト公爵をはじめとした戦士たちを空間魔法で送り込む手はずだったのだ。
七人の勇者達を魔界の魔王に向かわせるために。
「こざかしい真似を! ぐっ!?」
「貴様の相手は我らだ! よそ見は許さん!」
ウェスト公爵たちの、人類連合軍の作戦を理解したオルカートやバイパーは仲間たちを振り返って叫ぶ。
「皆行こう。魔王のもとに!」
「彼らの奮闘に報いるんだ!」
「「「「「おうっ!!!!」」」」」
七人の勇者たちは魔界へと向かっていった。
「おのれ、よくも邪魔を! 許さん!」
「なんとでも言うがいい。貴様はここで我らを相手に戦い続けるか我らに倒されるのだ。覚悟するがいい」
「それはこっちのセリフ、吾輩の邪魔をした報いを受けるがいい!」
勇者に次ぐ英雄と魔王軍大元帥ドラクン・エモンの戦いの火蓋が切って落とされた。
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