第15話
しかし、エアストの刀は顔を顰める魔王の左手で握られていた。
「アズマ王国の忍者……よく妾の背後に回れたものだ。しかし、この程度でどうとなるとは思うまい?」
「無論でござる。少し切れたはずなのに即死性の高い毒が全く効いていない時点で次の手は考えているでござる!」
「ぬ?」
突如、エアストが氷の人形になった。そして、そのまま氷の人形を通して魔王の手から足にかけて凍っていく。更に、他の勇者たちの追撃が加わる。
「聖剣サンダー!」
「ライトソニックスラッシュ!」
「ランサーショット!」
「マジックボム!」
「ショットアロー!」
それぞれの魔法・遠距離攻撃が魔王に向かっていく。どれも強力な一撃だ。たとえ大元帥が食らってもただでは済まないのだろうが、相手は魔王だ。
「なかなかだな。だが実に惜しい」
勇者たちの攻撃が魔王に迫る中、魔王は慌てることなく見据えるだけ。いや、その眼が血のように赤い光を放ち、向かってくる魔法や攻撃を打ち消してしまった。
「な、何! 俺達の攻撃が消えた!」
「いや、魔王の能力で相殺されたんだ! 見ろ、奴の目が赤く輝いている!」
弓使いのバイパーは気付いた。魔王は凍らされた状態からも脱していたのもその力によるものだと。
「いかにも。我が魔眼『破道眼(はどうがん)』の力だ。貴様らの魔法も攻撃も我が魔眼の力で相殺したのだ。そして――」
「っ!」
魔王は横から切りかかってきたヘルメイトの剣を片手で受け止めてしまった。
「こ奴の動きも見抜いていたというわけだ。ダークストライク!」
「うわあああっ!」
魔王の得意な闇の魔法をもろに食らったヘルメイトはそのままぶっ飛ばされてしまった。
「ヘルメイト! くそ! よくも――っ!?」
「今度は貴様が相手か? 聖剣使い?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
魔王と勇者たちの戦いは始まったばかり。しかし、一瞬にして勇者たちの懐に入っていた魔王を近距離で見てしまった勇者たちは同じ事を思った。
『勝てるのか? こんな化け物に?』
◇
勇者達と魔王の戦いは熾烈なものになった。
魔王ターレナ・コロク。その力は勇者たちの想像を超えていた。
剣に魔力を纏って突き出すことで広範囲の攻撃ができる『爆獣破』の威力、魔眼『破道眼』の強力な力。火・水・風・土・雷・闇あらゆる属性の魔法に加え、五大元帥の魔法も使えるのだから単体ででたらめな戦力だ。最初は剣を使っていたが、魔法と肉弾戦による格闘がメインのようで、勇者達全員をしてにしても中々決定打を当てられない。
救いがあるとすれば魔王軍側の増援が何故か来ないことだが、それでも数の上では有利なはずの勇者達が追い込まれている状況が続いた。
「爆獣爪破(ばくじゅうそうは)!」
「がはぁっ!」
「オルカート!」
獣の爪のような斬撃がオルカートを切り裂いた。そんなオルカートが地に身を落とす直前でエアストがしっかり受け止める。
「オルカートもか、くそ! 早くボクの結界に!」
「オルカート殿! しっかりするでござる」
戦いの中盤、バイパー・タヒナ・オルカートが戦線を離脱した。彼らの誰もが戦いの中で重傷かつ意識不明という状態に陥り、ポエイムがその三人を結界を張って守るということになっていた。
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