第3話
お父さまが亡くなってからというものシンデレラはずっと小間使いのように働きづめだったのだけど、そんなある日やってきた転機が『舞踏会への招待状』
なんでもこの国の王子さまが花嫁を見つけるための舞踏会とのことで、私たち俄然張り切ったわ。
その招待状だけれど…。
お母さまは貧乏ながらも男爵家出身で、再婚相手でシンデレラの実の父親は爵位はないものの裕福な商人ゆえ当然私たちの分だけでなくシンデレラにも招待状が届いていたのだけど、お母さまは「ごくつぶしなんかに必要ないわよね」と意地悪く笑って、シンデレラの分の招待状を破って暖炉に放り込んだの。
それを見ていた私と妹は、手を叩いて喜んで…。
ああ、今思い出すと、なんて性格が悪かったのかしら!
あのころはそうすることが当然で正しいことなんだと思い込んでいた。
「どう?このドレス、舞踏会のために新調したのよ。フフっ、うらやましいでしょう!あなたにはこんなドレス一生縁がないでしょうからね!」「ちょっとぉ!シンデレラ!お姉さまにばかりかまってないで、私の支度を手伝いなさいよー!!」
舞踏会当日、私たち姉妹はいつものようにシンデレラに対して心ない言葉をかけたものだわ、自分と同じ年頃の娘が私より劣る立場にいるのが、なんだか妙に気分が良かったのもあるけれど…。
シンデレラは黙々と私たち姉妹の身支度を手伝ってくれたのだけど、心なしか表情がウキウキ楽しそうに見えたのよね。
不審に思った私はお母さまに言いつけたのだけど、問い詰めたらなんと!
シンデレラは一緒に舞踏会へ行こうとしてるのがわかって…。
「お願いです、私も舞踏会へ連れて行ってください」
目を潤ませながら上目づかいにお母さまにお願いしたのを見た私、なんだかイラッとしたのよね。
「なに言ってるの!?舞踏会行こうにも着てくドレスなんてないでしょう?」
そう、シンデレラは長いこと新しいドレスなんて買ってもらっていなかったことを私はよく知っていた。
「お姉さまのおっしゃるとおりよ、お母さまや私たちのお下がりのボロしか持ってないじゃない!」
妹も加勢してシンデレラを責め立てる。
「招待状だってないだろうに…」
お母さまは呆れてため息をついていたわ。
「ドレスならここにあります、それに私の招待状がなくても、家族が一緒なら…」
シンデレラはそう言ってどこかからドレスを引っ張り出してきたわ、それは決して流行のドレスではなかったのだけど、シンプルで地味ながらもなんとか舞踏会へ着ていけそうな代物だったのよね。
「やだ、シンデレラってばいつのまに!」
私は心底驚いたわ、彼女が自由になるお金なんて一銭も与えていなかったはずだし…。
「これは亡くなったお母さまの形見をリメイクしたものなんです」
シンデレラは得意げな顔つきでリメイクしたドレスを胸に当てたわ、その美しいことと言ったら!
彼女って日頃薄汚れた服着て家事こなしてはいたものの、もとの顔立ちはきれいなほうなのはイヤでもわかっていた。
「誰が家族だって!?図々しい!それに、あの女の遺したドレスをまだ持っていたなんて!」
お母さまの顔色がみるみる怒りで真っ赤になったのは言うまでもなかったわ、だってシンデレラの母親が持っていた服やら宝石類は、私たちの生活のため全て売り払ったはずだったのだから…。
「えいっ、忌々しい!」
お母さまはシンデレラの手からドレスを引ったくって窓の外へと放り出した、
「なにするんですか!返してください!!」
シンデレラは泣きながらドレスを取りに行こうとしたけど、私と妹二人がかりで押さえてすぐには動けないようにしたわ。
「生意気なのよ、シンデレラの分際で!」「あんたなんかに舞踏会に参加する資格なんてないのよ!」
その間にお母さまが放り投げたドレスをめちゃくちゃにしに行ったのだけど、あいにく家の前にいた猫が空から降ってきたドレスを鳥かなにかと間違えたのか、すでに無惨にもぐちゃぐちゃにされていたの。
後から駆けつけたシンデレラはドレスの残骸を握りしめて泣いていたの、当時の私はザマァとしか思えなかった。
「うっ、うっ、う…」
今思い出すと、なんてかわいそうなことをしてしまったのかと胸が痛むわ。
でもいくら反省して謝ったところで、してしまったことは許されることではないのよね…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます