女神の塔(十一)
不必要なほどの横幅、無駄なほどの装飾。『女神の塔』の最上層に続く白亜の大階段。そこで私は自らが見出した魔術師の卵、エリューゼを見上げていた。
「天に
エリューゼが掲げた宝玉付きの
剣士が剣を打ち交わすように、魔術師は破壊魔術の基本である【
「強くなったね、エリューゼ。ちゃんと魔術を学んだんだね」
「てめえ、馬鹿にしてんのかよ。その程度の魔力で偉そうな口利いてんじゃねえ」
「違うよ。いろいろ辛いこともあったはずなのに、魔術の勉強は
「それが馬鹿にしてるって言ってんだよ!」
続けざまに放たれた【
「……相変わらず優しいね、エリューゼは」
貧民街で初めて出会った時もそうだった。この子は私に対して何度も何度も警告して、ようやく放った【
「くそっ、
エリューゼが掲げた
中級破壊魔術【
「エリューゼ、あなたはそんな事ができるような子じゃない。あなたが本当は優しいことも、たくさん努力してきたことも、私にはわかるよ」
「くっそ!分かったような口利きやがって!もうアンタなんか何とも思ってねえんだよ!」
振り下ろされる
「……やっぱりあなたは優しいよ、エリューゼ」
背中の
「……アンタだって同じだろ。その剣は飾りかよ」
その通りだ、この隙に間合いを詰めて剣を突き出せば勝負は決まっていた。私にもエリューゼを斬る覚悟など無い。
「一応聞くよ、エリューゼ。そこを通してくれない?」
「ふざけんな。今度こそ吹っ飛ばしてやる」
言葉ではそう言いながら、互いに動くことができない。動けば今度こそどちらかが倒れることになるから。もしかするとミオさんはここまで計算してエリューゼを残したのだろうか。
だが。息が詰まるような
突然空中から視界に飛び込んできた丸い物体。それは柔らかな重量感をもって私とエリューゼの間で弾んだ。
「ぷはー!おまたせー!」
柔らかそうな丸い物体、ラミカは顔じゅうから汗を
「ラミカ!まさか【
「おー。体力より魔力使った方が楽だってわかった」
そんな馬鹿な。上級魔術を使うより足で階段を上る方が消耗するなど普通では考えられない……が、この子はあらゆる意味で私の理解を超えている。
「行きなよユイちゃん、お子ちゃまは私に任せなって」
「でもこの子は……」
「何でも一人で背負い込むの、ユイちゃんの悪い癖だよー」
「……わかった。エリューゼのこと、お願い」
「……アンタみたいな苦労知らずのデブになんて負けないから」
「デブじゃないし!ちょっとぽっちゃりしてるだけだし!」
「黙れこの白豚。誰がどう見たって正真正銘のデブだっての」
「あったまきた!このクソガキ、けちょんけちょんにしてやる!」
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