テゼルト平原の戦い(六)
「
魔術を発現させる暇も無く、斜め上から打ち下ろされる
「どうした、何かするのではなかったか?」
何か言い返す余裕も無く、その挑発には魔術で答えることにした。
「怒れる大地の精霊、今こそ目覚め
「草木の友たる大地の精霊、その長き手を以て
足下から木の根が噴き上がり、瞬く間に下半身に絡み付く。しかし男が無造作に歩を進めると、それは虚しく引きちぎられて地を這った。
「天に
黒い兜から覗く顔面に向けて放たれたそれは、眼前に掲げられた手甲の表面を僅かに
「そんな……」
「気は済んだか?ならば首だけは親友とやらに再会させてやるとするか」
駄目だ、やはりメドルーサには魔術も剣術も通用しない。なら私にできるのは援護を待ち、この男を引き付けて味方の損害を減らすことだけだ。
「内なる生命の精霊、我に疾風のごとき加護を。来たりて
続けざまに薙ぎ込まれる
「お嬢ちゃん、無事かい!?」
「無事に見えますか!?」
思わず軽口を叩いてしまったのは、頼もしい味方の声に
続いて姿を現したのはロシュフォールさん、ネストールさん、バルタザールさん、ユーロ侯爵軍が誇る三騎士。
「ユイ殿、ご無事で何より」
「見つけたぞメドルーサ!
「我らを相手に無事に帰れると思うなよ」
四人の手練れが四方を囲む。この人達ならばあるいは、そう思ったのだけれど……
真横に薙がれた
その二人さえ返す一撃でまとめて払いのけられ地に転がる。そこに割り込んだポーラさんも恐るべき刃を受け止めるのが精一杯で、身代わりに厚刃の大剣の先半分を失ってしまった。
メドルーサが薄笑いを浮かべたまま頭上で長大な得物を旋回させる。巨大な
四方を囲む四人の勇者が息を呑む。これが振り下ろされた時、いずれかの者が真二つに断ち割られてしまうに違いない。にやりと笑うその目が、四分の一の確率を引き当ててしまった不幸な者を見下ろした。
「ポーラさん!!」
あまりの力と速度に避けようも受け止めようもない。天から落ちる雷のごとく、重く分厚い刃が女騎士の頭に落下した。
「お嬢ちゃん、あんた……」
「っ……だいじょうぶ、です……」
ポーラさんに助け起こされていたということは、私は倒れていたのだろうか。
巨大な刃が頭のどこかを
なぜ止めを刺されなかったのだろうと
頭髪から軍装、剣の鞘に至るまで黒一色の『
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