フルート市防衛戦(二)
王都フルートの正門から中心部に続く幅の広い道、それが両軍の死体で埋まっている。血でぬめる石畳を踏みしめ、横たわる人に心の中で謝りながら飛び越えて街路を駆け抜ける。
初めてこの町を訪れたときはさんざん道に迷ったものだが、今日はその心配がない。この赤く濡れた道の先に目的の人物がいるに違いないのだから。
果たしてその者はいた。
白大理石の噴水が印象的な中央広場。平時であれば市民で
息を弾ませてその前に回り込んだ。敵将が足を止めたのは、私が戦場に似つかわしくない小柄な女性だったからか。
「女、そこを
「そうは参りません」
耳に届いた声は意外なほど落ち着いていた。これまで積み上げてきた死体の数から野獣のような男を想像していたのだが、この声といい理性的な目といい、暴虐な侵略者という印象とは程遠い。
ハバキア帝国の将軍、
ミハエルさんからの情報が正しければ、このエルトリアへの侵攻は
この男の前に立ちはだかるのが私では役者不足だろうが、これ以上エルトリア兵を道連れにさせるわけにもいかない。
「覚悟の上か。ならば良し、二度は言わぬ」
「ガルバラン将軍、それほど
「なに?」
「
「私達は
「ふん、
再び歩みを進めようとする敵将の前で両手を広げたが、背中の汗が止まらない。こうして向かい合っているだけで絶望的な実力差を覚えてしまう。
「先ほど
「この
「今はその通りです。ですが今後、
夕闇迫る中央広場に
「
「エルトリア王国
「ガルバランだ。魔人将の首、見事
せっかくのお言葉だけれど、それは無理というものだ。
功名心に駆られて実力差を見誤るほど愚かではない、これほどの
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