リーベ市攻略戦(二)
地下道の天井に作られた出入口を押し上げ、古びた資材庫の中へ。わざと乱雑に詰め込まれた廃材の隙間を縫って外に出ると、既にリーベ城塞の各所から煙と喚声が上がっていた。
カミーユ君が自ら図面を引いて司令部を新設したのは、自身の快適な居住を目的としたものではない。古い地下道を改修して工作隊の侵入を可能にし、城内各所で熱と水を供給する動力球の出力を最大まで高め、密閉された場所で接触させることで爆発を起こす。その仕掛けで複数の施設と城壁の一部を破壊するというものだった。
彼の軍略といえばきめ細かい補給による戦力の維持と正攻法の用兵が特徴で、このような奇術
夕闇迫る混乱の中、白を基調としたぼろぼろの軍装の一隊が帝国兵を蹴散らしていく。エルトリア最精鋭と名高い北部方面軍が突入に成功したようだ。
「ロット君!」
「おう、ユイ。あとは任せて休んでろ」
「そうはいかないよ。ロット君ってどこか抜けてるんだから」
「大丈夫だって。俺だって強くなったんだぞ」
「認めるけど、それとこれとは別」
「信用ねえなあ」
ロット君が所属する北部方面軍と私の小隊を合わせて八十名ほどは、混乱する帝国軍の抵抗を排して目的地に達した。
新築したばかりの司令所が跡形もなく崩れ落ちている。これほど綺麗に破壊されているのは、爆発の威力と建物の耐久力を完璧に計算した上での事に違いない。意地悪なカミーユ君の事だから、もしかすると他にも仕掛けがあったのかもしれない。
紫色の空と舞い散る火の粉を背景に立っているのは、長身の男が一人だけ。
全身に走る裂傷から青い血が
「
彼が五体満足であれば、私を含めエルトリア軍に少なからぬ被害が出ていたかもしれない。しかしこれほどの重傷を負ってはまともに剣を振るうこともできず、逃げることすらままならず、周囲に味方の一兵も無い。
敵味方から恐れられた
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