リーベ市防衛戦(十三)
混戦の中、カイナを追って斜面を駆け上がる。
軍学校時代、彼女は目立つ生徒ではなかった。魔術や一般教養などの成績は中の下といったところで、私に嫌がらせを続けていた時も仲間の陰に隠れていた。
複数の剣術科の男子生徒と遊んでいたようだが、度を過ぎるということもなかった。自分を可愛らしく見せることが得意な、遊び好きな普通の女生徒。
それらのどこまでが虚構で、どこからが本当の彼女なのか。
「速い……普通じゃない」
下草が茂り木の根が
私も少々足には自信がある、どころではない。学生時代から競い合ってきたのはあのカチュアだ、
その私にして、ともすれば見失いそうになるほどの敏捷性。時折振り返り、
「どこまでも馬鹿にして……」
ただ、私は冷静さを失ってはいない。彼女を追い立て、帝国軍の援護ができないほど引き離せば良いだけだ。そろそろ頃合いだろう、と城塞に引き返すべく足を緩める。
「エルトリア兵に追われています!こっちです!」
カイナの声に複数の足音が重なった。見るまでもない、帝国兵だ。見るからに精強、しかも黒髪黒目の女性剣士をはじめ、いくつか見知った顔がある。
「ユーロ侯爵軍!」
帝国でも武門の
彼らの動きがやや鈍かったのは具体的な命令がなかったためと、やはり私に対しての遠慮があったからだろう。これなら逃げ切れる、と
【
「捕らえよ。丁重に扱え」
敢えて感情を消したカチュアの声。銀鞘の
「駄目ですよー、この子は魔術師なんですから。これも没収しないと」
カイナは私の左手を掴むと、魔術の媒体にしている
カイナ、どこまでも
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます