リーベ市防衛戦(九)
「おう。後のことは心配すんな、下がってろ」
自分でも驚いたことに、私はロット君に
王都で都会の誘惑に
「何だ、お前は」
「ロットってんだ。よろしくな」
短い名乗りに続いて上がったのは、鋭く重い金属音。
水平に
「なんだ。強えと思ったら、
「
「それもそうだな。悪かった」
激しく重い刃鳴りが連鎖する。体を入れ替え、攻守を変えて十余合。
しだいに形勢が傾いてきた。ロット君の
ロット君の剣術は相変わらず粗い。刀剣を操る技術がそれほど伸びたようには見えない。
ただ、引きずっていた迷いや不安が姿を消したようだ。上手に見せようとしていない、小手先の技術を使おうとしていない。むしろそういった
おそらくロット君には、このような戦い方が合っているのだろう。恵まれた体格を活かして体力と腕力で圧倒し、相手に技を
そういえばカチュアも言っていた。「力押しだけの相手は楽だけど、それなりの技術がある相手に力で圧倒されるのが一番嫌だよ」と。
まさに剛剣。一流ではあっても見せかけの技に
ロット君の大剣が
「あんた怪我してたろ。また今度な」
「ふざけるな!
だが私達の周りでは戦況が一変していた。ロット君と同じ軍装の部隊が帝国兵を押し返し、追い立てていく。この白を基調とした軍装はエルトリア王国最精鋭、北部方面軍。
「ファルネウスさん、帝国軍にいる事情は改めてお聞きします。今は
「……」
旧知の
彼が私に何かを期待しているように、私も彼には特別な思いがある。
彼が私を
「ユイ、立てるか?」
「うん。ロット君、見違えたよ」
「お前にやられっぱなしで終わる訳にいかねえだろ、兄貴としてはさ」
あのロット君が、本当に見違えた。
久しぶりに握った兄の手は、大きくて分厚くてがさついて、豆だらけだった。
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