人の姿をした獣(十一)
亜人種自治区、フルシュ村。
以前ここを訪れた時は豊かな緑の中を半獣人の子供が駆け回り、飲み物や軽食を売る屋台が軒を連ねていたものだ。
だが今は村の周囲に柵が巡らされ、武器を担いだ
それらは全て、私達
「……この
椅子から立ち上がり、深く頭を下げる。
村の集会所に集まった十数人の代表者は、ことごとく厳しい顔で腕を組んでいる。当然だろう、幾人もの同胞が無残に殺され、その
続いて関係者の処罰と損害の賠償を約束し、定期的な会合の場を
「……でも」
小さな声に皆が振り向いた。村に一つだけの学校で読み書きを教えている魔術師、プラタレーナ。軍学校の同期生。
「……お話は、するべきだと、思います。話さないとわからない事もあるから……」
それでも彼女のような人がいる。道のりは遠くても、お互いが少しずつ歩み寄ればきっと共に手を
「何しけた顔してんのさ。飲むよ飲むよ!」
「痛いって。そんなに
柱を立てて屋根を張っただけの、風通しの良すぎる酒場。粗末な椅子に腰かけて、馬鹿力で私の肩を揺さぶったのはエアリー。その
「いやあ、強かったわ。あいつ」
「私は心配してなかったけど?」
「少しは心配しなよ。
「じゃあ、もう一回やったら負ける?」
「それは無い」
「でしょ?」
私達が『あいつ』と言ったのは、亜人種の虐殺に手を染めていた小隊長アルバール。私もエアリーも何度か剣を交えた、剣士としてはまぎれもなく一流の男だ。
だが私には、エアリーの優勢がはっきり見えていた。
夜の戦いではやや押されていたようだが、それは全体の戦況が不利であったからだ。どれほどの達人であっても、崩れる味方を支えながら本領を発揮するのは難しい。
だがエアリーの技量自体は半年前よりもずっと進歩しているし、私が見るところアルバールは逆境に弱い。あの追い詰められた局面で力を発揮することはできないだろう。
それにアルバールは、エアリーにとって超えるべき壁だ。半年前の私がそうであったように。壁を乗り越えた彼女もまた、さらに力を増したことだろう。
「ユイちゃんってばさ、優しそうな顔して意外と厳しいよね」
「そ、そうかな」
「自分にはもっと厳しいでしょ?たまには息抜きしなよ、
またしても馬鹿力で背中を叩かれ、むせ返りつつ村の風景を
子供を抱いた
「あ、あいつね。彼氏」
「え、誰!?どの人!?」
「あそこにいる、でっかい
「えええええ!?」
「おーい、あんたも来な。一緒に飲もうよ」
私は間抜けにも口を開けっぱなしにしてしまった。エアリーという子を理解しているつもりだったけれど、半年ほど会わないうちに異種族の男性と交際しているとは、さすがに予想できなかった。
でも彼女はこういう子だ。
やっぱりこの子は、私では
いつか『
◆
ここまでお読みくださりありがとうございます。
一人でも読んでくださる方がいる限り書き続けようと思っていたのですが、それどころではない数のフォロー、ハート、コメントなどを頂いてしまい恐縮しております。
ただの貧相な少女だったユイちゃんの旅も中盤を過ぎまして、次話からは初の国外任務、親友との再会、宿敵との決着と進んで参ります。
ずいぶんと長いお話になってしまいましたが、どうか最後までお付き合いくださいますようお願い致します。
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