人の姿をした獣(十)
十数合の手合わせで私の力を見極め、ヤサクは勝利を確信したのだろう。だが。
「内なる生命の精霊よ、我は勝利を渇望する。来たりて
「なんだと!?馬鹿な……!」
「どうですか?自慢の腕力で上回られた気持ちは」
この男には致命的な弱点がある。技巧を封じ込めるほどの腕力は大したものだが、それに頼り切った剣術であるため、腕力で上回られると勝機が無いのだ。
私は剛力を上回る剛力でそれを封じ込め、力任せに押し込み十分に崩しておいて、細身の
「やるじゃねえか!」
大剣を放り投げ、腰帯から引き抜いた短剣を腰だめに構えて飛び込んでくる。
この切り替えの早さ、思い切り、やはり何度も死線をくぐった者の動きだ。さらに短剣を叩き落しても
だが、最後にこの男は私を見誤った。小柄な女と
カチュアのように鮮やかにとはいかないが、迷いなく剣を手放しての
「どうですか!?得意の暴力で圧倒された気持ちは。体を斬り落とされた気持ちは!」
「ま、待て!俺の負けだ、もうやめてくれ!」
ヤサクは地面に両
この男が
「
「お前は
「どこまでも勝手なことを……」
私はこの男を獣だと思っていた、だから最後まで油断せずに済んだのかもしれない。
ヤサクの右手が軍靴に伸びる。慣れた動作でそこから放たれた短剣は、私の喉に突き刺さる直前で
「人の形をしているだけの
いよいよ覚悟を決めたか、ヤサクは本物の獣のような動きで飛びかかってきた。
それを
「どうしてこんな事を笑ってできるんですか。どうして……」
私が
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