人の姿をした獣(九)
亜人種自治区の森は深く、昼でも薄暗い。
それが夜となれば
アルバールだけでなく、この男の持ち物にも【
「なんだぁ、てめえは」
「女じゃねえか。へへ、こいつはついてやがる」
「待て!気を付けろ、こいつは……」
三人の男は三通りの言葉を発したが、聞く価値も無い。
「天に
頭上に出現させた三本の【
「お前、魔術師か」
「……」
この男の名前はヤサク。人の言葉を話す獣。
私はその獣を相手にせず、士官服の肩から
「……アイシャ?アイシャだよね、この声。駄目だよ、逃げて。この人達は……」
「遅くなってごめん……私はあなたを助けに来たの」
ヤサクと私は同時にゆっくりと立ち上がり、剣を抜いた。
「いい度胸だな、女」
「王国
「面白い、やってみろ!」
静かな夜の森に
分厚く幅の広い無骨な大剣と、細く繊細な
剣を打ち交わすこと十数合。やはりだ、この男は強い。
もちろん技術はアルバールに及ばない。だが圧倒的な腕力に加えて、幾度も死線をくぐり命のやりとりを経験した者だけが
もしアルバールとヤサクが戦えば、経過はともかく最後に生き残るのはこの男の方だろう。アルバールもそれを感じ取っていたからこそ、この野獣のような男の蛮行を黙認せざるを得なかったのだ。
「いい腕だ、女。アルバール程度になら勝てただろうな」
アルバール小隊員ヤサク・バザック。品性下劣にして極めて粗暴な野獣。
だが一人の戦士として見るならば、これは並大抵の相手ではない。
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