行政官フレッソ・カーシュナー(六)
乱雑な場所だ。床も壁も板張りの十五歩四方ほどの部屋には窓が一つだけ、いくつかの書棚と机、床にはぶちまけたような紙の資料。油が燃えている臭いがするのは、壁に掛けられたランプに灯がついているためか。机に向かっていた中年女性がゆっくりとこちらを振り向いた。
やはりこの人か、と思ったのも
「えっ!?何を……」
その顔を見てもう一度驚いた。表面に薄く木目が浮いている。
「これは……【
人形は
先日会ったこの女性は確かに生きている
瞬く間に燃え上がる床の資料、まるで計算されていたかのように炎が広がる。いくら何でも火の回りが早すぎる、油紙が混じっていたのだろうか?だとすればこれは……
「……っ、やっぱり!」
入って来た扉の
「我が生命の精霊、偽りの鍵となりてその封を解け!【
駄目だ、【
「ようこそ我が城へ、ユイ・レックハルト」
軽薄そうな人を小馬鹿にした声、この声には聞き覚えがある。
「フレッソ!リースはどうしたの!」
「隣にいるよ。彼女も俺の忠実な
「違う!リースは私を裏切ったりしない!」
「どうかな。そこから生きて出られたら証拠を見せてやってもいい」
「そうさせてもらう!」
ついさっきまでリースは私と一緒だったし、彼女に不自然な様子はなかった。あの気弱で優しいリースが人を
ゆっくりと両手を広げて歩み寄る女性型の
「リース!いま行くからね!」
抜き打ちにその頭部を斬り飛ばす。炎に包まれた人形は、やはり声もなくその場に崩れ落ちた。
◆
(5/13追記)この回を含む章前半部分を修正しました。
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