行政官フレッソ・カーシュナー(四)
リゼルちゃんとの話が終わり、リースの部屋に場所を移して。
私はリースに事情を話すことにした。実はここを訪れたのは
「黙っていてごめん、事情を知ったらかえってリースが危険になるかと思って」
「ううん。私は演技とかそういうのできないから」
リースに一通りの事情を打ち明ける。フレッソがリゼルちゃんを
「その……フレッソ?っていう人はどんな感じなの?」
「リースは見たことない?軍学校の一年先輩なんだけど。細身の赤毛で、かなり綺麗な人だよ。でもそれは表面だけだから気を付けた方がいい」
「わかった。気を付ける」
他にもいくつか情報を交換し、別れの挨拶とともに立ち上がった時。
またしても言い知れぬ違和感を覚えた。
不意に動きを止めた私を
「世に
【
これだ、備え付けの化粧台に嵌め込まれている水晶球。その周囲に風の精霊が
私は無言でペンを取り出し、掌の上に走らせた。
『この部屋が盗聴されてる』
リースの顔が
こんな事をするのはフレッソ・カーシュナー、あの男しかいない。
しかし【
近くにこの会話を聞いていた者がいる。それもおそらくこの部屋だけではない、城じゅうのあらゆる場所に仕掛けられているのではないか。
部屋を出て小声でリースに告げる。
「リース、ここは危険だよ。すぐにでも城を出た方がいい」
「でも……当主様もリゼル様もいるもの。二人を置いてなんて行けない」
「それはそうだけど……」
再び不審な気配に視線を走らせる。その先にはまたあの陰気そうな使用人が立っていた。
「……お帰りでございますか?」
無言で頷き、案内に従って城の外へ。リースとリゼルちゃんが心配だけれど、今の私にこれ以上のことはできない。
もどかしく立ち去った私は後日、若年で領地経営が難しいリゼルちゃんを補佐する者が王国から派遣されたと聞くことになる。
その名前は……
◆
(5/13追記)この回を含む章前半部分を修正しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます