魔人族の小さな幸せ(六)
鉄製の
それでも数に任せて襲い来る妖魔の勢いは衰えず、私達は背中合わせのまま重囲の中に閉じ込められてしまった。エレナさんは腕力にも敏捷性にも優れるが戦い慣れているわけではなく、しばしば姿勢を崩しては手傷を負ってしまう。
「んうっ……!」
「エレナさん、しっかり!もう少しです!」
加えて厄介なのが
「空を駆けし自由なる風の精霊、その意のままに舞い狂え!【
にわかに巻き起こった暴風が頭上の
私にももう大規模魔術を使えるほどの力は残っていないが、それよりも心配なのはエレナさんの方だ。戦いに慣れていない彼女は先程から激しく呼吸を乱し、赤い返り血に混じって自らの青い血を垂らしている。
「っく……ごめんなさいユイさん、私のせいで……」
「いいえ!エレナさんは何も悪くありません!」
棒切れを振りかざす
これまで積み上げてきた努力も、出会ってきた人達との縁も、これから起こるであろう出来事も、絶対に無駄にはしない。どんなに辛くても苦しくても手足を
「来い!みんな
左肩に突き立てられた短剣に構わず体を
なおも噴き上がる凄惨な血煙に
迎え撃つ数人の村人、その中にフェルケさんがいた。だが
「エレナが戦っているんだ。ぼ、僕だってやってみせる!」
だが。
「助けてファルネウス!いるんでしょう!?」
ずっと控え目だったエレナさんが発したとは思えない大きな声。棍棒を掲げたまま動きを止めた
「ちっ、慣れない事をするからだ」
あからさまな舌打ちとともに血濡れた剣を引き抜く若い男。ファルネウスと呼ばれたのは、宿に食材を卸していた商人風の男だった。
見た目には目立った特徴が無いようにも思えるが、その身体能力は目を
「
「こ、こいつも
「ふん……」
彼らにも妖魔に向けたものと同じような視線を送り、鼻を鳴らすファルネウスさん。悠然と立ち去る
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