魔人族の小さな幸せ(三)
ナナイ村に来て三日が過ぎたが、村人に紛れているという
村長や村人に何度も言ったように、
一方、村周辺の妖魔の動きは明らかに異常だ。狩人に同行して村に隣接する森の様子を探ったところ、
村の周辺で妖魔らしき気配を感じたことも一度や二度ではなかった、これでは確かに村人が不安になるのも無理はない。すぐにでも近隣の領主に連絡して支援を求めなければ……
そう考えて宿屋の個室で領主宛ての手紙を
村長に負けず劣らずせっかちな人だ。落ち着きの無さは伝染するのだろうかと、愚にもつかぬ事を考えながら外套を羽織る。この日は午後になって急に冷え込み、吐く息が白くなるほどだったから。
「
村長のグラさんは前にも増して早口で、調査の
「何度も申し上げますが、
「しかし!皆が不安に思っております。
会話が噛み合っていない、こちらの話を聞いていないのだから当然だ。
「村周辺の妖魔の存在は確認しました。取り急ぎ隣接する領主に書面で支援を求めますので、それまでお待ちください」
「そんな
「では、村人全員の指に針を刺して血の色を確かめるというのはどうですか?これは名案かもしれませんぞ、すぐにでも村人全員を集めて……」
「おやめください。村人の間に亀裂を生むおつもりですか」
私は声と手で村長を押しとどめた。何が名案か、それならば私の到着を待つまでもなく自分でやれば良かったはずだ。それになぜ今このような提案をするのか?今ならば私に責任を押し付け、
そもそも私は魔術師だ。
彼らが『全て誰かが悪い』『誰かが何とかしてくれる』という意識を捨てなければ、この村に本当の平穏は訪れない。だがそれには大きなきっかけと人々の協力、それから長い時間を必要とするだろう……
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