アカイア冒険者ギルド再調査(五)
「ユイちゃん、あなた
「うん。黙っててごめん……」
魔術師であることを明かした時と同じように、いやそれ以上に夕陽色の目が見開かれる。
アカイア冒険者ギルドに併設された食堂で私は、濃緑色の士官服に包まれた小さな体をさらに縮こめていた。体を張って守ろうとしてくれたエアリーに対して力を隠し身分を偽るなど、とても許されることではないと思ったから。
一刻ほど前。
依頼者軽視、同行者への配慮不足、安易な敵前逃亡など、単体では処罰の対象とはならないものの軽微な義務違反が積み重なったこと、私達が帰る前に為された『
それについて私から言うべき事は無い。ギルドの内規が適当であり、それに従って正しく調査・処分が行われていれば国がいちいち口を挟むものではないから。
組織の改革など、なかなか一筋縄でいくものではない。外から強い力を加えても頭を取り換えても容易には進まず、内側から変わろうとしてようやく一歩というところ。まだまだ問題は多いけれど、アカイア冒険者ギルドは変わりつつある。それを自分の目と耳で確かめることができたのは収穫だった。
「どこから嘘だったの?十七歳っていうのも、その剣がお父さんの形見っていうのも嘘?」
「年齢は本当だよ。でもごめん、剣のことは嘘。剣術を教えてくれた友達に
「なあんだ。じゃあお父さんは生きてるんだね?それなら良かった」
「う、うん。エアリーはいい子だね、本当に」
カイルさんは本当の父親ではないし、命にかかわる虐待を繰り返した生みの親に対しては複雑な思いがある。だがエアリーの純粋な気持ちは受け取っておきたい。この子は人の悪意よりも善意を信じ、人の心に闇よりも光を見出すのだから。
「それにしても残念だなあ、ユイちゃんが
「隠してたのは本当にごめん。でも良かったら友達になってくれないかな」
エアリーは明るい色の目を何度かしばたかせたかと思うと、胸の前で大きな掌を力強く合わせた。ぱん!という大きな音に、昼食を摂っていた何人かが振り返る。
「そっかぁ!別にユイちゃんが
「うん。一緒に依頼を受けたりはできないと思うけど、エアリーが友達だと思ってくれたら嬉しい」
「よーし!じゃあこっちに
「どうしてそうなるの!?まだ昼なのに!?」
「いいのいいの、細かいことは。さあさあ
豪快に
体格も性格も好きな食べ物も何もかも違うけれど、この大雑把さと気遣いの良さはどこかラミカを思わせる。
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