アカイア冒険者ギルド再調査(二)
道中見せてもらった依頼書で、今さらながらに依頼内容を確認する。アカイア市から徒歩で一日弱、マリボーという村近くの森に棲み付いた
「
軽薄そうなオラフさん、陰湿そうなメドロさん、粗暴そうなガザさん、失礼ながらそう覚えてしまった三人は
単体ではそれほどの脅威にならないので冒険者にとっては格好の討伐対象になるのだが、まれに体格に優れる個体が現れたり、より上位の妖魔に率いられていることもあるため油断すると足元をすくわれかねない。それくらいの用心はしてほしいものだけれど……
「ねえねえ、ユイちゃんは何歳なの?」
「ええと、十七歳です」
「そうなの!?絶対年下だと思ったのに、同い年なんだ!」
「そうなんですね。私もエアリーさんが年上だと思ってました」
「じゃあその堅苦しい言葉遣いやめようよ。私ねー……」
エアリーは明るく人懐っこい娘で、人相の悪い三人組を放置して私にばかり話しかける。同性だから当然といえば当然と言えるかもしれないが、三人組の素行を観察したい私にとっては少々
「ねえ、ちょっと手合わせしてみようよ」
「え?ここでですか?」
昼食休憩の際、あっという間に携帯食を食べ終わったエアリーは私に勝負を持ち掛けた。
よろしいですか?と尋ねる私と、いいよね?と尋ねるエアリーに、オラフさんが軽薄そうな顔に軽薄そうな笑いを浮かべて頷いた。
エアリーと軽く剣を合わせてみて驚いた、良い腕だ。『一介の冒険者としては』という
「やるじゃん。じゃあ遠慮なくいくよ!」
私が軽々とその剣を
「ぷはー、楽しかったぁ。互角ってとこかな」
「ええ、そうですね」
「だからその言葉遣いやめなってばー」
大きな体から盛大に湯気を上げつつ、エアリーは座り込んだ。大柄な人は持久力に欠ける場合が多いものだが、どうやら彼女もその例に漏れないようだ。
相手の実力を
しまった。未熟な新人を
「ずいぶん立派な剣だね。それユイちゃんの?」
そんな私の内心に構わず、体を
「これですか?ええと、お父さんの形見なんです」
「そうなの!?ごめん、あたしってば……」
精緻な細工が施された銀鞘の
「エアリーは誰から剣を習ったの?」
「あたし?村に昔傭兵だったお爺さんがいて、子供の頃から遊び半分で教えてもらってたの。片腕のくせにすっごい強くてさ、今でも全然勝てないんだよね」
「そうなんだ。いい師匠に出会えたんだね」
「でも口が悪いんだよ?『お前なんか井戸の中の蛙どころかおたまじゃくしだ。広い世界を見て来い』とか言われてさー」
口をとがらせて軽口を叩きつつ、希望を胸に屈託なく笑う少女剣士。この若さと明るさと優しさは彼女の将来を照らすことだろう、多くの人を救って名を挙げるのは案外こういう子なのかもしれない。
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