王国魔術師?ラミカ(三)
予定していた章まで魔術書を読み進めた私は、手元の水晶球に掛けてあった【
ややしばらくしてラミカの声がした。すっかり眠っているものだと思っていたが、こちらに背を向けたまま起きていたようだ。
「ねえユイちゃん、私の体どうだったー?」
「え?どういう……」
「
思わず毛布をはね
「血はどうだった?赤かったでしょー?」
「ごめんラミカ!私……」
「いいんだ、慣れてるから。子供の頃から魔術が使えたもんでさ、やれ天才だ、将来の大魔術師だって。んで体じゅう調べられたり、血ぃ
「私、あなたを疑って……」
「ごめんユイちゃん、王国魔術師にはならないよ。面倒くさいもん」
この子が人との距離感を測るのが上手い理由が、ようやくわかった気がする。ラミカは子供の頃から様々な興味や好奇の目、時には悪意に
周りの人々が味方なのか敵なのか判断できなければ危険に
ラミカは人と争わない。自身の優れた才能を承知しており、それが時に他者の
「ぶっちゃけ私ってお金にも才能にも恵まれてるからさー。楽して適当に生きてきたし、これからもそうかなって」
「それでいいと思うよ。お金や地位を欲しがって争うよりずっといい」
死霊が住まう古城で、私はそう話したばかりなのに。ラミカも私と一緒の時間を心地良く思ってくれていたはずなのに。それを壊してしまったのは私だ。
誰もが立身出世を望むわけではない、名声を欲しがるわけでもない。なのに私はラミカのためと言いつつ、国益や自分の望みばかりを押し付けようとしていたのだ。
たぶん自責の念に耐えられなくなったのだと思う、気づけば私は誰にも明かしていないことを口に出していた。
「ラミカ、あの、実はね。もしかしたら私の方が
親友のカチュアにも、今の両親にも、ロット君にも伝えたことはない。【
「もうすっかり薄くなったけど、少しだけ前の記憶が残っているの。こことは違う場所で、違う人として生きていたみたい。
闇の向こうから返事はなく、返ってきたのは盛大ないびきの音だけ。
そう、ラミカとはこういう子だ。敏感で聡明で人との距離感に優れ、自分を
私は本当に、本当に大切な友達を失ってしまったのかもしれない。わざとらしいいびきに掻き消されるほど小さな溜息をついて、私は毛布をかぶり直した。
夜が明けると、何もかもいつも通りだった。寝ぼけ
通り
やがて出発を
「待って、ラミカ!」
「なあにー?」
「その……ずっと私と友達でいてくれるかな」
「当たり前じゃーん。何言ってるのー?」
「そ、そうだよね。何言ってるんだろ私」
「そうだよー。じゃあ行くねー」
「必ず会いに行くよ。またね!」
「うん。またねー」
やかましい音と砂埃を上げて、ラミカを乗せた馬車は遠ざかっていく。
やがてその影が見えなくなっても、私は大切な友達を疑ってしまった罰の重さに耐えられずにいた。
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