死霊達の主(六)
昼なお暗い古城を薄い霧が包む。それは窓が抜け落ちた穴から、崩れかけた壁の亀裂から、あらゆる隙間から侵入して城内の調度品をも湿らせる。
本来静かなはずの無人の城に、今は激しい息遣いと乱れた足音が響く。一階では大した苦労も無く
「ね、ねえユイちゃん、水飲んでいいかな」
「これが終わったらね!」
「今すぐ飲みたいんだけどなー」
「
「そりゃあ大変だー」
背中合わせに【
「あーもう!これでも食らえー!」
「ふへへへへ……どうよー」
「ちょっと詰めが甘かったけどね」
床下からラミカに
それにしてもこの
「ぷええええ~、疲れたぁ~」
「ユイちゃんってさー、どうしてそんなに一生懸命になれるの?」
「え?どうしたの急に」
「ルッツさんって人とすごく仲がいいわけじゃないっしょ?ぶっちゃけ他人じゃん。なのに命懸けで骸骨やら亡霊やらと戦って、給料おんなじっしょ?なんで?」
「そんなこと言われても……」
一本だけ手渡された細い干し芋を
「……後悔したくない、のかな」
きっと後悔しているのだろう、一度自ら命を断ったことを。
取り返しのつかない選択をしてしまう前に何かできたかもしれない、他の道があったのかもしれない。だから今度こそそうならないよう努力してきたし、自分と同じように辛い思いをする人を助けたいと思う。ただそれだけだ。
「ふうん。いやー、私ってこんなんじゃん?ユイちゃんみたいにはなれないなーって」
「ラミカは無い?後悔とか、そういうの」
「無いかなー。ぶっちゃけ私って、お金にも才能にも恵まれてるからさー。楽して適当に生きてきたし、これからもそうかなって」
「それでいいと思うよ。お金や地位を欲しがって争うよりずっといい」
「優しいー。ユイちゃんのそういうとこ、大好きー」
「こら、甘えんな」
足にまとわりつくラミカの
後になって思う、私はこの時の会話を覚えておけば良かった。そうすれば後悔することは無かったはずなのに。
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