メブスタ男爵家調査依頼(五)
「あ、旦那様。このような場所に足をお運びになるとは……」
「アイネ、おぬしに用がある。ついて参れ」
『【
今回の作戦には、魔術科の先輩にあたるフレッソ・カーシュナーの研究成果を使わせてもらった。
【
最近雇われたという使用人、アイネさんに身に着けてもらっている水晶の首飾りには、【
当主テトリクスさんが呼んだという魔術師が到着したのはつい先程。すぐ行動に移したところを見ると、よほど待ちかねていたのだろうか。
「三階に上った。左に曲がって、奥に向かってる」
【
「この先三〇歩。右奥の部屋の中」
「父上の私室か……」
先程の男爵の様子からすると、それほど余裕はなさそうだ。装飾が施された扉の前に揃った私達は、ラミカが持つ水晶球から発せられる声に耳を傾けた。
「あの、旦那様、これは……」
「
「承知しました」
ひっ、と引き
「我が生命の精霊、偽りの鍵となりてその封を解け!」
「内なる生命の精霊、我に疾風のごとき加護を。来たりて
ラミカが【
夕刻にもまだ早いというのにカーテンが閉められた薄暗い部屋。奥に当主テトリクスさん、灰色ローブの老魔術師。夫人エンデさんが無表情で立っているところまでは予測通りだったが、中央に浮かぶ異様な生物だけは全くの想定外だった。
「
宙に浮かぶ黒いぼろ布から骨と皮だけの大きな手が飛び出ている、そうとしか表現しようのない異界の存在。それは私達を察知したのか、くるりと向きを変えた。
ぼろ布の中身が私を見ている、のだと思う。
だがそれと目が合うことはなかった。布の中には顔や目どころか何もなく、闇だけが存在していたのだから。
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