メブスタ男爵家調査依頼(四)
「ねえラミカ、どう思う?」
「あんまり塩味が濃すぎると飽きちゃうんだよねー。素材の味を前面に出してほしいっていうか」
「ごめん、お菓子の好みじゃなくって、エンデさんのこと」
「あー」
穏やかな海を望むメブスタ男爵家の一室。お菓子を食べているラミカに突然話しかけたのだから、これは私が悪い。
「遺体そのものは【
「近くから人形みたいに操るだけなら、できない事もないけど。そんな感じじゃなかったねー」
「うん。男爵とユッカ君の他には誰もいなかったし、一応自分の意思で動いたり、
「死人を生き返らせたり、意思を持たせたりなんて魔術の
「うーん……」
少なくとも私達が学んできた
「
「やっぱりその線かなあ」
不意に扉が二回叩かれた。ラミカと顔を見合わせ立ち上がる。
扉に【
剣を鞘ごと左手に握ったまま、入口側の壁に背を預けて右手で
廊下に立っていたのはユッカペッカ君と騎士アロイスさんだったが、彼らもまだ完全に信用できる相手とは思っていない。二人を招き入れて再び【
「作戦の打ち合わせに参りました」
アロイスさんはそう告げたが、その手に持っている物を見て私は少し呆れてしまった。
「ユイ様には、これを着て待機して頂きたいと存じます」
「……申し訳ありませんが、私達は他の方法を考えております」
彼が手にしているのは、この家に勤める使用人の服だ。最近雇った使用人に成りすまして魔術師を捕らえろというのは本気だったようだ。
確かに使用人を危険に
そして何よりも、こんなひらひらしたスカートで剣も鎧も無しに正体不明の敵と戦う私の身にもなってほしい。この人は頭は切れるのかもしれないが、どうも陳腐な筋書きが好きなように思える。
「ええー?いいじゃん、ユイちゃんが着ないなら私が着るー」
「……まあいいけど。服がきつくて動けないとか、スカートで戦えないとか言わないでよ?」
「だいじょぶだよー」
何故か乗り気なラミカが満面の笑みで使用人の服を受け取り、主に私とアロイスさんが意見を交換して作戦の細部を打ち合わせる。この人は有能ゆえの傲慢さはあるものの確かに思慮深く、頼りになることは間違いなさそうだ。
「実行にあたって、一つ条件があります。ユッカ君を私達に同行させてください」
「ユッカペッカ様を?そのような危険な真似は……」
「どう?ユッカ君」
男爵家の
軍学校でのユッカ君はカミーユ君と並び称されるほどの虚弱で知られていた。今回も戦力的には役に立たないどころか、むしろ邪魔になりかねない。それでも同行を求めたのは、今後の彼にとって必要なことだと思ったからだ。
「……わかった。僕も一緒に行こう」
この件が終われば彼は男爵家を継ぐことになるかもしれない、それは多くの責任を背負うことを意味する。いつまでも何でも人任せではいけないはずだ。
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