儀仗兵ロットの憂鬱(八)
地下水路の奥で折り重なっていた人骨が灰となって消え去った後、残されていた衣服の残骸を拾い上げる。大きさも材質もまちまちだが、全て男性用のものだ。やはりここに棲みついているのは男性を誘惑して捕食するという妖魔、
「新しい遺体もあったから、今も使っている巣だね。ここで待ち伏せしよう」
「【
「ううん、このままでいい」
私の知識が正しければ、蛇は視覚よりも匂いや熱で敵を感知しているはずだ。ならば光を消してしまえばこちらだけが不利になる。上半身が女性の姿だという
ふと隣を見ると、ロット君が鞘に納めた剣を両手で握り締めて目を閉じていた。これから恐るべき妖魔と対するのだから無理もないと思ったが、その顔から読み取れるものは恐怖ではなかった。むしろ決意、覚悟という
「どうしたの?ロット君」
「……もし、もしさ。敵が
そうだった。彼は
村が妖魔の群れに襲われた時は傷ついた私の代わりに
「大丈夫だよ、ロット君。自分と私を信じて」
ロット君の手に右手を重ねる。微かに震えているが大きくて
ふん、と鼻を鳴らして目をそらしたエリューゼだったが、すぐにその顔がひきつった。
「き、きた……!」
曲がり角の向こうから聞こえる、何かが
ずるずるという音が不意に止まり、生臭い匂いが流れてきた。こちらに気付いて警戒しているのだろうか。
早鐘のように鳴る鼓動を押し隠して腰の
「天に
一筋の閃光が巨体の中央に突き刺さるが、恐るべき妖魔は小うるさげに身をくねらせただけ。
やはり
ことさらに剣を振り回し水飛沫を上げる私を喰らわんと鎌首をもたげる
「おらああっ!」
無防備の胴にロット君が満身の力を込めた横薙ぎ。だがそれは硬い鱗に阻まれ、妖魔を存分に切り裂くには至らなかった。蛇の威嚇音に甲高い女性の悲鳴が混じり、尻尾ががらがらと激しい音を立てて震える。
ちっ、というロット君の舌打ちは敵を仕留め損なったことよりも、
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