儀仗兵ロットの憂鬱(四)
子供達には地下水路に入らないように言い含め、一度王宮に戻り上司に報告を済ませる。
貧民街で続いた失踪事件の原因が
まだ夕食には早い時刻。思ったよりも早く仕事が終わったので、ロット君の部屋を訪ねてみることにした。木造二階建ての集合住宅、決して立派ではないけれど、宿舎で暮らす者が多いという入団一年目の兵士にはなかなかの贅沢品だろう。
何度か扉を叩いたものの返事がないので、仕方なく少し歩いて市街地へ。急いで飛び込んだ閉店間際の服飾店で安物の首飾りを手に取った。
「ええと……これがいいかな」
本物の
雲がなければ頭上にいくつも星が
私に一度負けたくらいで立ち直れなくなるとは思わないけれど、都会の誘惑から簡単に抜け出せるとも思えない。周囲に流されやすい彼のことだ、刺激的な美女と美酒に囲まれて身を崩してしまわないとも限らない。
「私は
「僕は
「俺は
共に交わした十五歳の誓いがずいぶん遠い日のように感じられる。あの日の夢も希望も、怠惰で刺激的な日常にまみれて案外簡単に終わりを迎えてしまうのかもしれない。
私は頭を振り、髪についた
「世に
安物の首飾りに全身の想いと力を込める。緑色の
「天より注ぐ光、地を包む闇……」
初めて会ったロット君は、ただ背の高いだけの未熟な若者だった。
「喰らい尽くす火、与え満たす水……」
軍学校では目覚ましい成長を遂げた。おそらく私の知らないところで
「自由なる風、
王都で暮らし始めた彼の変わりようには驚いたけれど、それも必要な遠回りなのかもしれない。先日の手合わせの後に見せた顔は村で剣を叩きつけたときと同じだった。大丈夫、彼はきっとまた強くなる。
「我が祈りをここに捧げる。いかなる時も彼と共に
雲が晴れたか、銀色の月が少しだけ顔を覗かせた。
もし彼が闇の中で道に迷っているならば、少しだけ足元を照らしてあげてほしい。
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