儀仗兵ロットの憂鬱(二)
川沿いにある練兵所の一角、仕事に向かう人々が朝の挨拶を交わす時刻。
春の陽射しが柔らかい、川のせせらぎが耳に優しい、頬を
眠たげな目をこすりつつ模擬剣を受け取るロット君、その表情も
昨夜、久しぶりに手合わせをしようと言ってきたのは彼の方だ。だからこうして早朝のうちに練兵所を借りる
しかも何故か昨日の友人達も一緒で、全員が昨夜と同じ服を着ている。察するに朝まで飲み明かしたか、それとも誰かの家に泊まったか。いずれにしても手合わせの準備などできていない。
「いい?始めるよ」
「おう」
それでも。彼が剣を構えると、
数瞬の間は互いの呼吸を計るため。誘うように剣先を揺らすと、それに応えてロット君が踏み込んできた。
鋭く重い斬撃。やはり彼の体格と腕力は
互いに
「おおー。やるじゃん妹ちゃん」
「ロット、負けんなよー」
声援というよりも
今日の彼は明らかに精彩を欠いている。余計な装飾がついたジャケットが動きを
力が
「おいおい、女に負けんなよー?」
「お兄ちゃんがんばってー。ぎゃはははは」
焦り、
「うるせえ!黙って見てろ!」
暴風のごとき猛攻。長剣が
ロット君の顔から怒りと悔しさが
「……だっさ」
軽蔑の感情を顔に浮かべる派手な女、笑い転げる友人達。
彼らはわかっていない。ロット君の
彼はどこか周りに流されやすいところがある。私やカミーユ君、カチュア達がいた軍学校で
「……ユイ、俺は弱くなったのかな」
「ううん。ただ、ロット君らしくない剣だった」
剣術に関してはあまり直接的な助言をしたくない。彼が目指す『
ただ、これだけは言っておかなければならない。すれ違いざまに一言だけ付け加えた。
「ねえ。あの
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