亜人種自治区における産業の調査および振興(一)
長旅続きで疲労は隠せないというのに、私の足は軽かった。
以前から申請していた『亜人種自治区における産業の調査及び振興』、この件への着手が認められたのだから。
さっそく現地の住人に案内をお願いする旨の手紙を送ると、驚くほど早く了承する旨の返書が届いたものだ。私が握るそれには丁寧に書かれた小さな文字が並んでいる。
差出人はプラタレーナさん、通称プラたん。無口なハーフエルフ。あの濃密な二年間を共に過ごした軍学校時代の友人だ。
エルトリア王国南東部、広大な森そのものを領域とする亜人種自治区。国の
馬車が通れるような街道を外れて徒歩で一日。交易村のうちの一つ、石造りの町を森の木々がほとんど飲み込んでしまったような場所にたどり着いた。
フルシュ村。地図にもプラたんからの手紙にもそう書かれている。
二足歩行の兎のような種族の子供と耳の長い子供が駆け去っていく。
頭に一本角がある大柄な女性と擦れ違う。
屋台で飲み物を売る女の子の背中には大きな白い翼が生えている。
むしろ純粋な
『学校』。
建物は古い教会を利用しているのだろう。木々に侵食されて装飾物などは跡形もないというのに、建物自体は大して
「間違えても気にすることねえだ。先生と一緒に、大きな声で歌うだよ」
開け放たれた教室の窓から聞き慣れた声が聞こえてきた。豊かに波打つ
『ひとつ、一人じゃ食べきれない』
『ふたつ、
『みっつ、みんなで分けたなら』
『よっつ、夜中におなかがすいても』
『いつつ、いつでも食べられる』
「頑張ってるね、プラタレーナ先生」
「ユイちゃんけ!?」
窓越しに私の両手を握ったプラたんは一つ
「……ようこそ、フルシュ村へ。ユイちゃん」
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