エルトリア王国公職試験(五)
エルトリア王都フルート、王宮近くの練兵所にて行われる公職試験は二日目を迎えていた。
昨日の一般教養試験はそれなりに出来たと思う。
問:「我が国の南端に位置するベリア半島の気候的特徴と特産品を二つ答えよ」
答:「南からの暖流の影響で一年を通して温暖多湿、磁器、葡萄酒」
問:「エルトリア王国法第三条『貴族特権』に、附則『権利の一時停止とその条件』が定められるに至った事件の名を答えよ」
答:「ルルイエ伯爵の反乱」
軍学校での一般教養の成績はアシュリー、プラたんに次ぐ三位。一年生のとき成績が振るわなかったのは独学で学んだ文字に間違いが多かったせいで、このような学習が苦手なわけではない。
それに国内外を巡る
問題は今日、明日の予定で行われる武術試験だ。
軍学校の卒業記念試合にて準優勝、あの『
武術試験は受験者同士の対戦を数名の試験官が見て評価するという形式なのだが、
「
「【
「試験官は意外にちゃんと見ているよ。目先の勝敗よりも試験に臨む姿勢、現在の実力、若ければ将来性などだね。彼らの印象も考えた方がいい」
つまり一か八かの賭けのような勝負や、小手先の魔術を使った奇襲などは避けた方が良いということだろう。
「一〇五番、ユイ・レックハルトさん」
はい、と答えて案内された試合場では、既に大柄な男性が待っていた。隆々とした体躯に大剣、擦り切れた衣服。歴戦の傭兵といった風体で、にたりとしか表記できないような笑い方をした。
「お姉ちゃんも騎士になるのかい?こいつは参ったな」
「はい。そのつもりです」
平然と言い返した私は自分の体に問いかけてみた。軽い緊張を覚えるが、これは自信の表れだ。呼吸に乱れもなく足も軽い、足場も悪くない。十分に力を出せそうだ。
次いで心の目を対戦相手に戻した。おそらくこの人は身体能力と経験において私に勝っている、剣術だけでまともに戦えば勝ち目は薄いだろう。
だがそれだけに私を
「内なる生命の精霊よ、我は勝利を渇望する。来たりて
「うおおっ!?」
開始早々、魔術の力を上乗せした上段からの打ち下ろし。まさかこれほど小柄で細身の娘が
満身の力を込めて押し返そうとする相手に構わずさらに押し込み、さらには剣から片手を離して力ずくで大剣を奪い取る。それを軽々と頭上で旋回させて相手の首筋に押し当てると、顔じゅう冷や汗だらけの男が両手を上げた。
「それまで。勝者一〇五番」
相手に大剣を返して丁寧に一礼すると、大きく息を吐き出した。意外と緊張していたのかもしれない。
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