エルトリア王国公職試験(二)
もう何度目だろうか。相手の体に当たっても仕方ないとまで思った打ち込みを
「っ・・・・・・そんな・・・・・・!」
「そんなはずはない、かい?」
切れ長の目が私を見下ろす。こんなものか、君には失望した、とその目が言っている。
私が憧れたフェリオさん、命の恩人の
「もう終わりにするかい?」
「・・・・・・いえ」
どうやら私は思い上がっていたようだ。
軍学校であの
フェリオさんと同じ
このままでは終われない。フェリオさんを失望させたくない。それに私が簡単にあしらわれては、決勝戦の相手だったカチュアまで軽く見られてしまう。それだけは絶対に、たとえフェリオさんでも許せない。
木剣を杖にして立ち上がり、大きく息を吐き出した。左手を天にかざし、小指に
「内なる生命の精霊、我に疾風のごとき加護を。来たりて
小石だらけの地面を蹴る。十歩の距離が瞬く間に詰まる。木剣が空を裂いて激突する。静かな村に響く乾いた音に、広場にいた数人が振り返った。委細構わず打ち下ろし、反撃の一閃に空を切らせて再び距離をとる。
「草木の友たる大地の精霊、その長き手を以て彼の者を
左手に応えて地面に亀裂が走り、フェリオさんの足元から草木の根が噴き上がる。横に跳んで
根を引きちぎったフェリオさんが間合いを詰めてくる、速い。魔術で敏捷性を高めていなければ逃れることはできなかっただろう。再び左手を一振り、短く詠唱。
「生命の根源たる水の精霊、来たりて形を成せ!【
赤、青、黄、緑、フェリオさんの周囲に色とりどりの
「内なる生命の精霊よ、我は勝利を渇望する。来たりて
急な戦術の変化に驚いたか、
「良い打ち込みだ。戦術、技術、気迫、ともに申し
言いつつ、すれ違いざまに木剣で横腹を撫でられた。
戦術を工夫し、魔術を駆使し、本気で打ち込んだ上での敗北は
久しぶりに力を出し切って座り込む私を見下ろすフェリオさん。その瞳からはもう怖さは感じられなかった。
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