卒業記念試合(三)
打ち交わす剣の響きに歓声が重なる。カチュアの斬撃をロット君が受け止め、跳ね返す。
ジュノン軍学校の卒業記念試合、準決勝。
僅か二年でロット君がこれほどの剣士になろうとは、私も想像していなかった。
村が
カチュアの強さは私が一番よく知っている。この二年間、彼女と最も剣を交わしたのは私だから。
「カチュアの弱点を教えてくれよ」
組み合わせが発表された日、そうロット君に聞かれた私は少し残念に感じたものだ。自分で観察して考えれば良いではないか、私に聞くなんて卑怯。そう思った。
「自分で考えたら?」
「考えたよ。でもいくらあいつを見ても考えても、勝てる気がしないんだ」
「じゃあ実力が違いすぎるってことじゃない」
「そんなことわかってる。わかった上でどうしても勝ちたい。頼むよ」
頭を下げられて私は困った。私だってカチュアと戦いたいし、友達の足を引っ張るのも嫌だ。
でもロット君の覚悟は伝わった。私に卑怯と思われようと、恥を忍んでも必ず勝つという決意。それに思い返してみれば、「ロット君はカチュアに一生勝てない」と言ってしまったのは私だ。彼はまだその言葉に縛られているのかもしれない。
「一つだけ無いこともないけど・・・・・・」
ロット君の顔が引き締まった。自分の記憶よりも大人っぽい表情を見せられて、少しだけ目をそらす。
「・・・・・・体重差」
体重差。私は二年前、村を襲った
私と
再び歓声。ロット君が重い斬撃でカチュアを追い立て、砂岩の床に描かれた線の隅に押し込んだ。今度こそ逃がさん、下段に構えたロット君の長剣がそう言っている。
数瞬の間。次で決めるという明確な意思を察したか、会場が静まり返る。
左下からの切上。力感と覚悟に満ちた、必殺の一閃。
だがその刃はカチュアが絶妙な角度で立てた剣の上を滑り、宙に流れた。
カチュアの剣は速度をそのままに、弧を描いてロット君の背を軽く叩いた。
「二年生ユイ・レックハルトさん、一年生アルバール・イスト君、第一試合場に入ってください」
そういえば、と両の掌を何度も握っては開く。じっとりと汗がにじんでいる。
自分が戦っていたかのように疲れてしまったが、私の出番はこれからだった。
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