十六歳の夢
私は今、とても緊張している。
恩人であり、目標であり、
「歴史の知識は広く浅くでいいんだ、軍学校の教科書があるならそれだけでいい。あとは各時代の本をいくつか読むといいよ。お勧めはね・・・・・・」
「法律関係は条文だけを読んでも頭に入らないよ、実際にそれを適用する場面を思い浮かべるんだ。僕が使っていた教材があるから、今度送ろう」
朝早くから自警団詰所の一室を借りて公職試験の対策。
「丁寧に基礎を繰り返したようだね、姿勢がとても安定している。良い先生に出会ったんだろう」
「今のユイ君には長剣は少し重いかもしれないね。身軽さを活かすには軽くて短い武器の方が向いているんじゃないかな」
陽が高くなってからは剣術の相手をしてもらった。私の先生といえばカチュアのことだ、彼女を褒められたのが何よりも嬉しい。
最後に一度だけ勝負を挑んだのだが、【
「それじゃあ頑張って。君ならきっと良い
「はい!あの、ありがとうございました!指輪、大事にします!」
フェリオさんは今夜アカイア市で打ち合わせがあるそうで、軍から借りた馬で慌ただしく去って行った。本当に無理やり私との時間を取ってくれたのだろう。
「・・・・・・という感じで、フェリオさんには全然歯が立たなかったよ」
「へえ。
「こいつ本番に強いんだよな。練習ではおかしな負け方するくせに」
カラヤ村の小さな酒場。明日カミーユ君が隣村に帰るというので、最後に夕食会を開くことにしたのだ。カミーユ君はあまりお酒が強くないのに好きなようで、この日も三杯目の
「でさ。フェリオさんが独身かどうかは聞いたの?」
「え!?そ、そんなの聞いてないよ」
「駄目じゃん。ユイさんって思い切りはいいのに恋愛には奥手だよね」
「見た目もいいんだし、あの年なら奥さんなり恋人なりいるんじゃない?」
「そうやって自分をごまかすのは良くないなあ」
黙っていれば中性的な美少年だというのに、顔を赤らめて
それに私には、断片的とはいえ男性だった記憶も残っている。フェリオさんが素敵な男性であることは確かだが、そう簡単に気持ちを整理できるものではない。
「この際ロットでもいいんじゃない?血がつながってないんでしょ」
「あれ?ロット君から聞いたの?」
「いや、言ってないぞ」
「やっぱりそうか。お兄さんを『君』付けで呼ぶ人は少ないと思ってね。ちなみに血縁関係にない兄弟姉妹との結婚は、エルトリア王国法第六条『成人の条件と権利および義務』の附則で認められているよ」
私とロット君は顔を見合わせた。
「じゃあ何て呼べばいいのかな・・・・・・お兄ちゃん?」
「な、なんだよ。気持ち悪いな」
ロット君とはお互い異性として意識したことはなかったはずなのに、おかしな事になってしまった。カミーユ君のせいだ。
『私は
『僕は
『俺は
私とカミーユ君、ロット君が誓い合ったのがちょうど一年前。
私達はそれぞれの未来にどれだけ近づけただろうか。
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