第二次カラヤ村防衛戦(六)
「あんた、アカイアから来てる商人だよな。鍛冶屋と細工屋に出入りしてる・・・・・・」
ロット君が剣を構え直し、問いかけた。
「おや、私をご存じでしたか。ならば話が早い、村までご一緒させてください」
長身の青年は笑顔を浮かべた。太陽が降り注ぐ往来でならば警戒心も薄れようが、薄暗い洞窟の奥で血濡れた長剣を手にしていては
「頭いかれてんのかよ。あんたが親玉だろ?
「ロット君!」
「馬鹿ロット!」
おかしな表現かもしれないが、私は心の中で頭を抱えた。たぶんカミーユ君も同じだ。
この男が
最低でも【
「ああ失礼。
青年の笑顔の質が変わった。邪悪と決めつけて良いほどの悪意が押し寄せてくる。
それに合わせて足元が小刻みに揺れ始めた。大地の精霊のざわめきを感じる。
「無慈悲な母たる大地の精霊、その手に抱かれ物言わぬ
その詠唱に聞き覚えは無いものの、記憶の片隅には残っていた。教科書を一通り予習したときに読み流した中級魔術、【
足場は狭く、三人全員が魔術の範囲外に逃れる時間もない。もう選択の余地がなかった。
「二人ともここに来て!内なる生命の精霊よ、我が魔素と共に宿りて魂の輝きとなれ!【
中級魔術を抑え込むなど、魔術科一年生の中でも劣等生の私にできるはずがない。凡人以下の魔力に【
でも成算はある。今日発現させた【
「フェリオさん、ありがとう。この指輪ならたぶん・・・・・・やれる」
左手の小指に
ずっと質入れしてあったそれを、私は昨日取り戻した。
魔術を増幅させるための媒体はその素材、造られてからの年月、製作者の技術、術者の思い入れによって大きく性能が変わるという。私にとってこれ以上の媒体はあり得ない、あとは自らを信じて思いを乗せるだけ。
「私は!私達は!こんなところで終わらない!!」
揺れ動く地面に向けて左手を振り下ろすと、地表近くで空気が裂けるような音がした。私達を飲み込もうと荒ぶっていた大地の精霊が
「
長身の青年が橋の上で歩みを進める。明確な殺意を込めて。
また私の膝が震えだした。おそらく剣士としての明らかな実力差を本能が感じとっているのだろう。私が知る一番の達人といえばカチュアだが、もし彼女に殺意を向けられればこうなるかもしれない。
もしカチュアのような
「ロット君、十秒もたせて!」
「お、おう!まかせろ!」
ロット君も既に
「ほう・・・・・・?」
男は邪悪な笑みに興味の色を重ねた。滑るように橋の上を移動し、やや遠い間合いから長剣を一閃させる。変則的な軌道を描いたそれは、ロット君の盾を削って左肩を
「十秒あれば私を何とかすると?」
「ああ。あいつが怖いなら早く俺を仕留めるんだな!」
計算したわけではないが、私の言葉は結果的にロット君を救った。男の剣は不規則に揺れ動き絡みつき、相手を
この男は圧倒的な実力を持つがゆえに戦いを
「内なる精霊、生命の根源たる者よ。我が魔素を
全身に不自然なほどの力が
そしてもう一つ、この場にふさわしくない生活用の基礎魔術を
「生命の根源たる水の精霊、来たりて形を成せ。【
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