第二次カラヤ村防衛戦(五)
「草木の友たる大地の精霊、その長き手を以て彼の者を
左手から地面に亀裂が走り、その先で植物の根が噴き上がる。絡め捕られた
「母なる大地の精霊、欠片となりて彼の者を撃て!【
周囲から無数の小石や岩の欠片が浮き上がり、風を裂いて降り注ぐ。
奇襲とはいえこちらはたった三人だ、それに気づかれないよう派手な魔術で
この【
ないはずだったが、
「あれ・・・・・・?」
おかしい。出力の調整に失敗しただろうか。
私の魔術はこれほどの威力ではなかったはずだ。【
「俺だって!」
首を
続いて上位種たる
先日の試合では両手持ちの長剣を使っていたが、今日は盾と片手剣も立派に使いこなしている。一年前の彼は剣術を少しかじった少年でしかなかったが、もはや
戦いは一方的なものになった。洞窟の入口で槍先を揃えられ、後背から魔術で急襲され、さらに洞窟の中から討伐隊の主力が戻ってきては勝負にならない。生き残った
「お前が大将だな?逃がすかよ!」
ロット君はひときわ立派な武具を身に着けた
「待ってロット、そいつは逃がしてやろう!」
「何だって!?」
「ユイさん、あいつの短剣に掛けた【
「うん。解除しない限りは」
「よし、じゃああいつに黒幕の所まで案内してもらおう」
「どうしてそんなのがいるって分かるんだよ」
「魔術を使える
「そう」
「だから、わかんねえって!」
こうなれば慌てる必要はない。討伐隊の隊長さんに状況を伝えてから、
「討伐隊が南の巣に向かったあと、すぐに西の巣から
「ただ内通者という線は考えにくい、こちらの動きを伝えるには何らかの合図が必要になるから。軍にしても村にしても、警戒している中で怪しい動きをすればすぐに見つかってしまう」
「さらに彼らは、守りを固めた村ではなく、村の防衛に戦力を割いて手薄になった討伐隊の方を狙った。これはこちらの情報が
「そして彼ら———さっきの
なるほど、とロット君は
それなら、と私が口を挟んだ。
「それなら
「そうなるね。まあ様子を見て、僕らだけで無理そうなら村に戻るさ。しばらくは正規軍だっているんだ」
付かず離れず気付かれずの距離を保って追跡した
「天に瞬く光の精霊、来たりて闇を照らせ。【
それぞれの剣の鞘に【
私の【
「主力は出払っただろうから、中に残っている
「肉体労働はよろしく、って言ってるよ。ロット君」
「わかってるよ!」
ロット君を先頭にカミーユ君、私の順で進んでいく。入口付近は広いだけの空間で、奥に通じる通路が一つだけあった。【
洞窟の奥の方は
だが今は別に伝えることがある。私は事務的な声を上げた。
「もう少し先。三十歩くらいかな」
「いたぞ。さっきの
はるか下の地底湖に架かる木製の橋、その上で二つの人影が揺れている。
私達は足音を消すような技術は持っていないし、何より【
濁点だらけの悲鳴が上がった。
「カラヤ村の方ですか?いやあ、助かりましたよ。こんな所に迷い込んで、
「僕達にそれを信じろと・・・・・・?」
カミーユ君の声が珍しく震えた。
何だろうこの・・・・・・
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