第二次カラヤ村防衛戦(三)
「待たせたね。では始めるとしようか」
正規軍との打ち合わせを終えたカイルさんを迎えて、再び私達の作戦会議が始まった。自警団詰所の一室に私、ロット君、カミーユ君が揃っている。
「軍は明朝、南の山にある
「無難なところですね。昨年出し抜かれているだけあって」
少々嫌味混じりにカミーユ君が言った通り、昨年は正規軍が西の山地にある巣を討伐に向かっている間に村を襲われてしまった。おそらく南の山地にあるもう一つの巣から来たのではないか、と言われている。
「偵察隊の報告によると、双方の巣の入口に
「数はどの程度と見積もっていますか?」
「騎士団の推測では南が二十から三十、西が十から二十というところだ。上位種の存在は確認されていない」
「村に残る戦力は、正規軍十名の他にはどれくらいです?」
「自警団二十名余りと私が残る。それからフェリオさんといったか、あの
カミーユ君が私を振り返る。頭を働かせている時の彼はいつもそうだが、どこも見ていないような目をする。今も私の顔を見ているようで、おそらく見えていない。思考には視覚が邪魔と言わんばかりだ。
「ユイさん、フェリオさんは腕が立つんだね?」
「うん。私達よりずっと」
「なら、昨年のように
「ああ。奴らを甘く見ていたせいで昨年は被害を出してしまった。中には反対する者もいるだろうが、後のことは私が責任を持つ」
「わかりました。では僕らの作戦を説明します」
既に正午を回っているが、私とロット君は村の猟師さんに頼んで、西の山地にある
「あそこ、洞窟の入口に見張りが二匹いるだろう?」
「あ、本当ですね。気づかなかった」
私もロット君も隠密行動など慣れていないし、軍学校でも教わっていない。やはり本職の方を頼って良かったと
「じゃ、行ってくる」
「気を付けてね。こっちも準備を進めるから」
ロット君が茂みをかき分けて巣に近づいて行く。体が大きくて、そそっかしくて、脳みそ筋肉の彼は最も隠密行動に向いていない
任務を継続できないほど早々に見つかったりしなければいい・・・・・・と思っていたのだが、下草に足を取られでもしたのか、派手に転んでがさがさと大きな物音を立ててしまった。見張りの
「ええい!これでもくらえ!」
開き直ったロット君が立ち上がり、短剣を投げつける。当初の予定よりも多少距離が遠かったが、それは『狙い違わず』
「どうだ、上手くいったろ」
どこまで本気なのか、駆け戻ってきた彼は得意気に笑ったが、私にそれを
「内なる生命の精霊、来たりて我と彼の者を結ぶ糸となれ。【
【
近くを飛んでいた
空飛ぶ
仕方がないので目を
「どうだ?追手が来そうか?」
使い魔となった
「ううん。五、六匹ほど出てきたけど、こっちには来なさそう」
「さっきの短剣は?」
「中から出てきた
「そうだろ、わざわざ地面が出てるところに落としたからな」
ロット君が投げた短剣には物品の現在地を特定する【位置特定(ロケーション】の魔術を掛けてある。
立派な短剣を拾って使うような個体はまず間違いなく戦闘要員だから、明日も主力として行動するはずだ。その位置を特定できれば、彼らの動向がある程度わかるだろう。わざわざ
いつものように雑な行動で任務に失敗しかけたロット君が胸を張る理由がわからないけれど、ともかく明日の準備は整った。
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