第二次カラヤ村防衛戦(一)
「ただいま戻りました」
「おう、帰ったか。そこに座ってくれ」
アメリアさん、クリアちゃんと
無事カラヤ村の自宅に帰ったのが半日前。この家で生活したことはまだ三十日ほどしかないのに、軍学校ではその十倍の時間を過ごしたことになる。
また家族として迎えてもらえるだろうか・・・・・・という不安は、すぐに消えて無くなった。村に着くなりシエロ君とクリアちゃんが「おねえちゃん、おかえり!」と飛びついてくれたから。
ロット君が「俺は・・・・・・?」とふてくされ、カミーユ君が笑いだして、里帰りの旅はひとまず終わった。
シエロ君は「おねえちゃんといっしょにおふろ行く!」と強硬に言い張ったのだが、しまいにはカイルさんに軽く
濡れた髪を布で巻いた私が席に着くと、会議が再開された。村の自警団長を務めるカイルさん・・・・・・お父さんをロット君、私、カミーユ君が囲む形で座る。
「で、だ。我々自警団は軍の要望に従うしかないし、昨年以上の戦力を村に残さねばならん。お前達三人で独自に動いてもらうしかないぞ」
「大筋の事情はわかりました。いくつかお尋ねしたい事があります」
カミーユ君が机の上で両手を組み合わせて口を開く。彼をカラヤ村に連れて来たのはこのためだ。
昨年この村は
「
「近年、奴らの数が増えていてな。多い年で五十匹ほどにもなる。よほど手慣れた者でもなければ返り討ちに遭ってしまうんだ」
「だとしても五組から六組、三十人もいれば十分でしょう。正規軍五十人とはあまりに過剰に思えます」
「数年前まではそうしていたんだ。だがある年、数匹を狩っただけで帰ってしまった奴らがいてな。残った
カミーユ君は机の上の両手をそのままに、両目を
「軍の滞在費などは村で負担していますか?」
「いや、事が終わってから謝礼を出すだけだ」
「そのお金はどこから出ていますか?額はいかほどです?」
「私は単なる自警団長だ。知らんこともあるし、答えられんこともある」
「出過ぎたことを聞いて申し訳ありません、では最後にもう一つだけ。村の近くに
「それは『答えられんこと』だ。すまんな」
カイルさんは苦笑して、だが君の想像通りだと思うぞ、と付け加えた。
「いえ、それだけ分かれば十分です」
私はカミーユ君と視線を合わせて
つまりこの
村は僅かな謝礼を出すだけで五十名規模の軍隊が数日間滞在してくれる。宿屋、酒場、屋台、酒屋、食料品店、日用品店、鍛冶屋、果てはそれらに品物を卸す行商人まで、村全体が潤うことだろう。
軍としても正式な派兵となれば様々な手当がつく。村では下にも置かぬ丁重な扱いを受けるし、実戦とはいえ組織力や身体能力に劣る
そして二つの巣を毎年片方ずつ交互に討伐するのは、
おそらく軍への謝礼は商店街からの寄付でまかなわれているだろう。隊長や幹部には個別にお金が流れているかもしれない。
「立案にあたり、それらを踏まえる必要があったんです。それで僕らの作戦ですが・・・・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺にはさっぱりわからなかったんだけど?」
ロット君が頭を抱えて割り込んだ。カイルさんが
「お前にはちょっと難しかったか。なら知らんでいい」
「そのあたりの事情って何だよ、答えられないことって何だよ!?ユイ、お前もわかったのかよ」
「う、うん。たぶん・・・・・・」
「わからなかったのはロットだけだよ。ま、作戦に支障はないさ」
「どいつもこいつも俺を馬鹿扱いしやがって!!」
せっかく私が「剣の腕は頼りにしてるよ」と取り
カミーユ君には優れた頭脳が、ロット君には強い体が、私には魔術がある。未熟でもお互いに足りないところを補えば良いはずだ。彼らも承知していることだろう・・・・・・たぶん。
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