強敵と書いて親友と読む(三)
「魔術師なら何度か斬っ・・・・・・戦ったことがあるけど」
カチュアがさらっと恐ろしいことを口走ったが、挑発した手前もう後には引けない。木剣ならそう簡単に死ぬこともないだろう、この子の腕前ならちゃんと手加減してくれるだろう・・・・・・たぶん。
私は十歩の距離をとり、【
「用意はいい?」
「うん・・・・・・」
どうも彼女は気乗りしない様子だ。それはそうか、戦う理由が希薄だし一方的すぎる。
いわば片思いのようなものだ。ならそれでいい、その目を私に向けてほしい。私が
「いくよ、カチュア!」
今の私は魔術の効果で
少しは驚いただろうか、でももっと違う表情を見せてほしい。速度に物を言わせて彼女の周囲を駆け抜け、擦れ違う一瞬に剣を
「草木の友たる大地の精霊、その長き手を以て
地面に着けた手からカチュアに向けて亀裂が走り、その足元に達した植物の根が噴き上がる。彼女は身を投げ出して
「草木の友たる大地の精霊、その命の
ざっ、と木々がざわめいた。数瞬の後、ちぎれ飛んだ無数の葉が渦を巻いてカチュアを包む。背後から膝の裏あたりを狙った一閃も、身を
改めて自分の周囲に全ての葉を集め、波状に叩きつけると同時に低い姿勢から斬り上げる。これも同じ姿勢で迎え撃たれて互いに飛び違い、再び十歩の距離で向かい合う。
「どうなってるの、その強さ。何をやっても当たる気がしないよ」
「日々の積み重ねだよ。それ以外に強くなる方法なんて無い」
「さっきと違って、ずいぶん楽しそうじゃない」
「面白いよ、ユイちゃんの戦い方。でももう品切れ?」
「どうかな?もっと楽しませてあげたいな」
「期待してるよ!」
初めてカチュアの方から仕掛けてきた。磨かれた黒曜石のような瞳、流水のように自然な
「ちょっとあなた達!決闘は禁止ですよ!」
互いの木剣が激突する寸前で停止した。魔術科担任のヒスタリア先生が腰に手を当てて
「ええと、これは決闘じゃなくて訓練で・・・・・・」
「ユイさん、あなたは魔術科でしょう。そんな物で遊んでいる時間はないはずです」
そんな物、遊んでいる、と来たか。反論したいのは山々だけれど、今はその時ではない。
「すみませんでした!寮に戻ります!」
「もうすぐ授業が始まりますよ。急いでください」
「はーい!」
戸惑うカチュアを
「ごめんねカチュア、また後で」
「あ、ユイちゃん」
「ん?」
「私に魔術を教えて。さっそく今日から」
「わかった!後でね!」
こうして私とカチュアの初めての勝負は、限りなくカチュアの勝ちに近い引き分けで終わった。
私達はこれから幾度となく、場面を変え立場を変えて剣を交えることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます