偽りでも雪月花は

静けさすら 毛羽立つような夜の瞬きすら 子午線に撃ち抜かれる 天壌の子どもたちに足はない それでは私たちは今ここに生まれ 誰の芽を賭して 花とあるのか 陽も月も水も風のたぶん ひとごとの、雨霰 虹のごとく架け橋の 筒抜けのこと。降り出した雪はたぶん、肺を焼き、腑を躍らせる。ひとに戻ることがかなうとき。


熟み出された痕の苑 鋒、ひとつの標として中程の臍のあたりの、聖なる場所の教会に芯が爆ぜたものです。わたしはふたり 虹彩の接点が交わり 円が節をひしゃげさせる。掻き出した愛を紡ぎはじめた糸を 抱合する。叡智も知性もありません、ただ見上げただけ、徐ろにはじまる虹彩離陸。雪月花が雅です。


どれこれも聖なる場所と指を挿し羅針盤は廻り巡る、暗夜の灯を溢したら標本ごと燃え広がり拝に灰を塵妬らせる。コンパスの針は胸に刺し口を噤んだ縫い針を嚥んだものだ。すべてがくるくると狂った我が儘で異化される。アンタの性 私のお陰。軋む黄昏に弓形の疾呼が草木ヲ煽っている、ざわざわざわざに


蜃気楼の奥ちいさな街の真ん中に立つ、大きな木に腰掛ける天使がいるとの噂。あれは柊だよと星が頭上にまたたく、いいや天の川の羽衣を纏っているのさとある冬のはじめに 飾らされた初雪が輝いたあと、ひかりだけを遺しているのだと誰もが知っていたが、口に出したら最期この夜は消えてしまうことも。



2023年3月5日

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烏鷺/黒白(20221207~ 詞梳記(ことばとき) @kotobareika

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