あれはなんぞ
なぜでしょうか また わかりませんが 足を止めてくださいました。
それは色眼鏡の似合う蛙、ちょんと言う手を反し、蓮の花に浮いて魅せその腹は真っ白で、可愛げもあったけれども。やっぱりきもちのわるいものでしたから。それでぐしゃぐしゃにつぶしたてのひらの、ヨゴレがそう見えただけでもありました。はあ、聞き返そうにも雨垂れの音色がトンカラリと、晴れて目を奪われたのか、
否。
抜け殻だけの白蛇が、塀の上をぬらぬらと游いでいました。心ばかしのモノがそう見せるようで高く細長い道は一本で在りました。わたしがそこにあって、出会って射って、木漏れ日から漏れる光がそう思えただけ。へばりついた空蝉が、点々とあって、まばゆいだけなのです。
そのどこか蛙と泣いているだけならばまだ、白昼夢ともするのですが。
、それだけなのです。
夢でも希望でもありません。
でかい模造紙に適当に線を引いたのです。ここから先はまだ余白にみえ、なにも書かれていないけれども、落書すらもできずに頓挫。
どっしりと腰を据えてしまったのです。
ああどうしましょうか、といった風情で、うすぐらやみにあります。あっ、と転げた鉛筆が数本、風に蹌踉めく草木を描いたようにも思えただけで、充分、瑞々しい青葉鏤めた、老老と飄々となにか、かたじけない雪月花の絵になるだけです。
しかし筆を握り墨を疾走らせ、思い描いたものはしんと、絶景には遠く、轟くは雷雲より、なにかカツカツとしたもので、擦り傷を拵えただけではないかと。
その旨/おいておいで、あちらこちらに疎らに散らかり放題のこの。
射し込まれた眩さをあの手この手で捕まえて覗き込んだもの。万華鏡にもなりゃしない、走馬灯にもならない、全くくだらない、立ち暗んだだけでしょうと、ほほにおでこに。てのひらあてて、その熱、染め上げられるあれこれに、瞳を写して考えるけれども。
まったくひとつもじぃとしていないので、やっぱりご立腹でした。
『はしがきをたよりに、おくづけをくちにして。熨斗に包んだ完璧な人生をお贈りします。この出し物は白紙に耀く鷺が夜に沁みた烏がおどります。この娯楽は試行錯誤の贋作により炙れた舞台もそこまできて、探索行動に酔って不確かな環境が隅々まで認知されております。』
(過去未来思い馳せる故、今を遺して皮と形代を、着せて寒くないように、祈り願います。)
薄暗い歩道のアーケードに面した部分は無毒で、信号は青の儘であったから、後ろ向きに進んでいた。キミらが、背中を見せているのは、恐怖からだよ。過去に斬り殺される前にホワイトアウトするほど、地団駄を踏んだ。
裸足で乗り込んだ始発便にある窓辺から光が剥がれていて寝そべった美女が、注がれたひかりに手を添えて微笑んでいた。男は白湯の縁からそれを覗き見ていただけ、シワの多いカラダが多くの年月を憶えさせた、写真がいちまい残されていただけ。
老女と大きな犬が帰りを待っているのだと、私たちは雪の降る中を、傘もささずに歩いている、轍はすぐに消えていく、白紙の塗り絵は鉛の訛、完成には程遠いばかりに。
納得しきれないといったところの、無法地帯はそれでも天真爛漫で少女のように恋をする。これが朝であるのか蛭であるのか、都へ向うのだろうか、あっちこっちへちょろちょろと流されていくものですから。無碍に可愛らしい存在です、ねぇ。バカにつける薬はないけど、丸め込むだけの力はあります。そうやって眼を足を潰して、この手で描けるだけの小さな視界が、目の前に広がるかぎり。
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