著しく歪めて(デフォルマシオン)

 生きたいとか死にたいとか遠い所にあったから、なんとなくそこをただ歩いていただけだ。

 年を重ねる竹林はそのひをうけて燦然と赫赫の内にあった。急がず騒がずズレた歩調でも誰も気づかぬところ。切り取られた視界に二人称が映る。それに華を添えた。

 私は多分オカアサマの貯水槽のもとでずっとわらっていらっしゃったのだと思います。あちらの扉の意味はない。敷居を踏みつける他意もない。ノブは外れまわらず鍵もかからない。だがBathroomに記憶ごと沈めたい。

 喜怒哀楽はどこにも繋がれていなかった、多くの感情はズレた読心術で、形ばかりの迷走劇など。おとぎ話のモラルが親しきに差し上げる、福笑いみたいなものでしたから。


 続けて私の宝物のひとつはちいさな箱庭である。これは自分だけが知ってる萌ゆるべき過去と懐かしむ未来を今と棄てさせる、いるものもいらないものも私だけの秘密のひも、縛っては見たものだ。

 ひとときも動かず天上から下がる、ガラスモビールは欠片残り少なく、寒く低い冬の間だけ、光をにじませていたがそれももう。「すぐだった。」カーテンも開かれない、そこには光は指さない、私の入り込めない空間があるばかり。


 わたしたちはなにか/朝も昼も夜も境目がわからない、空転する砂時計は耀くが色がない。更更としたときは満ち欠けをやりなおすだけ。/街路樹だけが真実だった。

 貴女の瞳の中でわたしはどんな姿で最後を迎えましたでしょうか。夢や希望があったに違いありませんね。私には知らぬことだと手探りで。首を絞めあげたら死んでいただけましたか! 未知は砕け去ったのでしょう? それでも続いていくのですね。


(こわぃ、な。)触れることもかなわない〈似合わないのよ/不釣り合いだな〉口パクだけの関係、で、(いやだ、ゎ!)


 颯爽、脱走、後奏、ぐぐぅぐるぐると噛み付いてなさったのですか。

 腥い月経のイロ虚勢にも魚拓のうえ、剥がれ落ちた洞古ウロコ覚束無い葦を絡めて。無邪気に握り出されたアオガエルはすぐに死んだ! 破れた植木鉢にザリガニを追い立てた、網で捕らえた虫かごの子たちは憐れにも散々視姦され、そのザマを死を見定められただけだろうよが!  

 私は檻の外へ、私は澱に巻かれて、私は私を認めきれない。


 みんなこんなものだと言い聞かせられて信じてた狭い箱庭だった未だ抜けだせやしない。脱皮したものを纏っていても腐っているだけなのにな。なぜだか棄てられないみたいな空蝉だったらまだ奇麗だったのに。恋に破れた人魚姫だって泡になって魅せて、とても綺麗なまま話の種になったのにさ。

 根も葉もないところに生まれ落ちたわけじゃないからなにかに縋って生きている、ひとりでなんていきていけないけど白昼夢すら見せてくれない現実に。


 瞳の奥頭の中胸のうちに酸いも甘いも嗅ぎ分けられている。そのコマのひとつひとつが紛失していくのを、目を瞑ってやり過ごしている。不完成なものたちは眩しくて残酷で憐れなものです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る