そこには誰もいない/けれども
自分を定めるべき言葉が、すべて、しっくりこないままだな。だからずっと曖昧なものが安心するんだ。どれも真実でない気がする、覚えても知り得ても、忘れてしまうだろ、都合のいいように解釈してねじ曲がってしまうんだよ。真実ってどこにあるんだ。自分が見えてるものが本当だとどうしていえよう。
視野以上のものが蔓延るけれど、捕らえられたらほら誰か、目を胸を塞ぐ〈門〉。己は狭くそれでいて自由である。その他、気配や光景、香りが得も言われぬ、包むようなせめぐあいで。そう、いらっしゃる。余所余所しいけれど 易しまにまに、やりきれぬ、気閊える、片隅でしか与えられない。そう今が亡びて。
雪に埋もれているのだ
碑は確かにそこにある。けれど誰にも気づかれることはない。
水鏡に映る、なんとやら、だったら?
色のない硝子に 写っている自分、か。影で磨いた輪郭、素描のような身じろぎ。だれだというのだ。あれはこれはなんだと耳障り。繰り返される善意が、かけら星屑の願いも適わぬ、眠気覚ましの緑茶が苦い。ただ日差しが翳りそこに渇き鋳る。占めしを点けるような。雨すら堕ちぬ、唯一等あかりが欲しい。
銀配色。
限りなくモノクロに近い光があとちょっとのあいだを透し過ぎていく。混じり気なく素っ気なく空いて散らしそっと溶ける。私と芽吹きもない過去の柘榴と焔も煙もない花火の未来とを累、芯を落とした薬包紙に一言を与えん。きをつけて孵って。嬉嬉として輝輝として一縷、痕少しの希望を、天を仰ぎ見る。
そのこころは、
一つ一つは手作りのケミカルめくるフェイクであって、差し引き零の光と闇を織り交ぜて円転に下る陽炎の皿に音した星の集まり。充填した蛇足を添付し過不足だらけの荷重をおまけに、割引だらけのラベルにモザイク。白々しいほど模範画を重ね、塗り絵のように発色した。
曼荼羅のアヤを型抜きしたよなまんまるの骨柄だけのフォントの人影、際どい轍の印象だけの手垢だらけの振る舞いで足跡ばかりで、立腐れた明白は見るからに欠けて無い。つぶらなサイズに設計された演出だけが意匠の名を刈り、名残ばかりが留められた症状と個性。
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