厚薄の某

 ツンとした靑が身を潜らせる結び目とかたち。セロファン紙が顔まで漬かって、むこうがわまで静かに覗いている。拗ねた未来ねじ曲がる過去からきっと生まれ変わる。死滅した熱帯魚のはりぼてが、溶け残ったら陽炎のようだった。不器用な線香花火 モノクロの向日葵、私は微熱が伝わるよう昇華をそぅと。


 ほんとうに躊躇い傷と、促し、線を落としたようなものを塞ぐ、絆創膏では駄目でしょ、と質す。艶っぽくキャンバスに軟膏を擦る。成りすましの手鳩を作るとにっこり、それで羽ばたかせる、ようだったから。一方それを新雪のパトロンと読んだ。ボクは視線をずらして気づかれないように模写しただけだよ。


 創世神の柔肌 ロフトの天井画 板の間の星屑 雨垂れの楽音。忘れてしまったけど。手を伸ばせば届きそうだ。どうせ掴んでは消える 見せかけだけのまぶたの裏に。そうだ息づいていた。ばらいろのひかり チェンバロの清閑よ、拍動はしめやかに常磐忠義をいだき かしずくがまま。オフェーリアのせせらぎよ。


 知れば知るほどわからなくなる。正しいのか判別できない 決めつけでは? これが答え?ENDなのかのループだ。考えるほど無駄な時間を過ごしてると知ってる。何も変化ない ただの屁理屈の残骸しか言葉に出来ない。はまってないしっくり来ない どんどん馬鹿になる気がする。


 厚薄こうはくの某


 知れば知るほど選択肢は増え それを選び取って鵜呑みにする。そうやって過去を蓄積し形成されていくのが未来の夢や希望に沿う、色や香りを運んでくる。[私']がうつるのは誰の唇か瞳かわかりもしない。ただ鏡には自分がいる、狂わずに憑いてるその心は読み取れない。お前は誰だと問うと後れてこの胸に抱いた己が自嘲した


 錆びた羅針盤の中央に燐火が伏されると湖にある我々はそれを護るようにできている。まあ見張るように取り囲んでいるだけ、か細い明かりを色濃くのこし。岸辺にある親子の影が行きつ戻りつ、楔に繋がれた牧羊犬と大地を自由に駆るハイイロオオカミだけがそれを嗅ぎつけて確かな姿を寄せていたのだが。


 草臥れた巾着から績まれては成立しない嬰児がある。まなこふたつ、胡桃ひとつ。天霧る緋、後の地に、龍涎香に化けるよう呪いを授かった。粗暴犯のションベンがいつぞやの仕返しに、野花に糧を捧げましたが。占いではそれで、砂丘を先回りし船底から無常が去るという噺です。まったく雲の上にいるような気分で。


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